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国際会議報告

 

 

国際船舶海洋構造会議(ISSC)V.1専門家委員会(リスクアセスメント)出席報告

正員 吉田公一*

 

* 船舶艤装品研究所

 

はじめに

 

国際船舶海洋構造会議ISSCの専門家委員会V.1(リスクアセスメント)の会議が1999年9月23日及び24日に英国ロンドン郊外のウィンザーで開催されました。私は当委員会の議長を務めておりますので、その会議の内容をここに報告致します。

 

1 V1専門委員会について

 

ISSCのV.1委員会は、リスクアセスメントの船舶海洋分野における研究、開発と応用の現状を調査してとりまとめるために、1997年のISSCトロントハイム会議にて設立された。メンバー構成は、吉田公一(議長)、Dr. Monica Loland-Eknes(ノルウェー DNV)、Mr. W. L. Hans Ludolphy(蘭)、Dr. William H. Moore(米 ABS)、Dr. Robart Prince Wright(英)、Prof. Kisri Tikka(米 Webb Institute)、Dr. Angelo Tonelli(伊 RINA)、Prof. Jan Erik Vinnem(ノルウェー)の8名である。

1997年のISSC 97会議に際して第1回の委員会会議を開催し、作業の進め方を話し会った後、1998年5月にオスロのDNV本部にて第2回会議を開催し、報告の内容と調査分担を決めた。その後、各委員が分担の調査を進め、今年9月に調査結果をロンドンに持ち寄って第3回会議を開催し、報告書の内容を検討した。

 

2 リスクアセスメントの船舶海洋分野への応用

 

船舶の分野では、その安全確保は主にSOLAS及び船舶安全法関連の法規が規定しているため、安全面に関する設計は規則に則っていればよいという考えが主流であり、船舶設計についてリスクアセスメントを適用して、その安全性を検証・証明した例は非常に少ない。北欧において、SOLAS条約に拠らない新しいデサインの旅客フェリーが建造されているが、その安全性については、リスクアセスメントの手法を用いず、現状の船舶の安全性との直接的比較を行って評価している。

海洋構造物(オフショア)の分野では、「パイパーアルファ」の事故以来、英国が個々の沖合い海洋構造物に安全性評価と検証(Safety Case)を課したため、リスクアナリシス技術の適用が進んでいる。沖合い海洋構造物に関するSafety Caseは専門化による多くの労力を要するため、その費用は通常百万米ドルに達する。従って、この技術を通常の船舶に適用することはコスト面から難しいのが現状である。

一方、IMOにおける従来の規則作成は、ある船舶の重大事故(タンカーや旅客フェリーの火災、タンカーの座礁と油の流出、旅客フェリーの沈没等)が起こった後で、その事故の再発を防ぐ観点から、専門家及び主官庁関係者による議論と判断で、新しい規則が作成・制定されてきた。しかしながら、その規則作成が恣意的である場合があり、また政治的圧力が加わることがあるため、その作成過程の透明性と内容の妥当性を明確な手法と基準に従って示すべきであるという主張が1990年代半ばから台頭してきた。このような批判に答えるため、IMOでは透明性と公平性のある原則作成のためのツールとして、Formal Safety Assessmentの指針を作成し、1998年にその暫定指針を制定した。リスクアセスメントは、FSAによる解析の中核をなすものとして、注目されている。

 

 

 

 

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