交通モード間の連携を中心とした総合的な交通政策に関する調査
1. 調査研究の目的
交通運輸をめぐる諸問題の解決にあたっては、交通モード毎の対策だけではなく、交通モード間の連携を図ることで、より総合的な交通政策を目指していく必要があると言われる、そこで、本調査は、交通モード間の連携に着目しつつ、我が国ならびに欧米諸国における総合的な交通政策の実態を把握し、それをもとに我が国への示唆を検討することを目的とする。
2. 我が国における総合的な交通政策の現状
我が国の主要都市の地方自治体、交通事業者等を対象に、総合的な交通政策に係わる既存計画(長期総合計画等)と具体的な施策(P&Rやバスターミナルの整備等)の現状と課題についてヒヤリング調査及びアンケート調査を行った。その結果、以下のような点が課題であることが明らかとなった。
(1) 総合的な交通政策に係わる既存計画の課題
・同一都市圏に類似した複数の計画がある場合があり、計画間で必ずしも整合がとれていない
・計画の目標が具体的でない
・計画策定後の事後評価が実施されていない等
(2) 具体施策実施上の財源確保・事業採算性に係わる課題
・施設整備の負担が大きいため単独での整備が困難
・補助制度が省庁毎に整備されておりわかりにくい
・補助が施設単位でなされることが多く、面的に広がりを持つ複数の施設を一括して整備することが困難 等
(3) 具体施策実施上の法的規制に係わる課題
・地方の実状に合わせた地方独自の取り組みが法制度の枠組みにより妨げられることがある等
(4) 具体施策実施上の推進体制に係わる課題
・広域的な交通問題に取り組むための地方自治体間の連絡が不十分な場合がある
・自治体と交通事業者との協議が不十分なことが多い
・自治体内の関係部局間における合意を得ることが困難である 等
3. 諸外国における総合的な交通政策の事例調査
(1) 英国における総合交通政策の現状
英国では、1998年にBlair政権が新たな交通白書を発表し、総合的な交通政策の重要性が唱えられた。白書を受けて、まず地方交通については新たにLocal Transport Plan (LTP)が設けられた。LTPは地方自治体の5年間の地方交通に関する戦略的な計画であると同時に中央政府からの資金を獲得するための入札資料であり、中央政府の基本方針である公共交通、徒歩、二輪車の利用促進に合致する計画に対して優先的に資金の配分がなされる。その判定には具体的な数値による指標が用いられる。