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図5に示すように、我が国で収集したデータの中にはこの基準値を超えた船も決して少なくない。

このように、操縦性能暫定基準A.751(18)は10°/10°z試験の2次行き過ぎ角、20°/20°z試験の1次行き過ぎ角そして停止距離については今後充分な検討を要すことが考えられる。もともと我が国はこの基準の制定に関しては10°/10°z試験の1次行き過ぎ角一つでYaw checkingとCourse keeping Abilityを評価することを提案していた経緯がある。停止性能に関しては基準では主管庁の判断に委ねることになっているが、基準値そのものは排水量や馬力等を考慮した検討が必要になると考えられる。

 

3. 今後の対応

前述のように、我が国では実船試験データを収集し、これらのデータを解析することにより操縦性能暫定基準A.751(18)の妥当性、適用性について検討を重ねている。RR74操縦性WGでは各国の情報を収集すべく種々の方法を試みているが、筆者の知る限りデンマーク、米国、韓国等で検討が行われているようであるが、その成果については未公表の段階である。また英国等において個人的ではあるがこの基準を高く評価する場合もあり、多くの国が前節に述べたように我が国の示している問題点を積極的に取り上げている訳ではなく、必ずしも各国の歩調がそろっている状態でないのが現状である。しかし、船舶の航行の安全性、海洋環境の保全等の観点からこの操縦性能暫定基準は正当なものを完備しておくべきであると考えられる。従って我が国としては、先のMSC(1999年2月)において、この暫定基準の見直しを開始する必要があることを資料(MSC71/20/9)を基に提案したところ賛同を得られ、設計設備小委員会(DE小委員会)で検討が開始されることになっている。

これらの具体案については、現在主としてRR74操縦性WGで検討が行われており、極めて近い将来、具体案も確定されることになると思われるが、今のところ我が国が当初提案したように、Yaw checkingとCourse keeping Abilityに関しては10゜/10゜z試験の1次行き過ぎ角で評価することを再度提案することが考えられる。しかし現状ではlO°/10°z試験の2次行き過ぎ角および20°/20°z試験の1次行き過ぎ角も評価項目として取り上げることをヨーロッパ諸国は強く希望しているところから、日本提案通りに進むことは仲々困難であることが予想される。この場合には少なくとも先述の10°/10°z試験の2次行き過ぎ角および20°/20°z試験の1次行き過ぎ角に関しては、妥当な基準値となるように強く働きかけて行くことが必要となろう。

 

 

 

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