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3 新設備について

 

今回の改正に伴ない新たに船舶に搭載される設備(船舶の大きさ、航行区域によって拡大適用されるものを除く。)の主なものとして、AIS、VDR、トラックコントロールシステム(Track Control System:自動航路保持システム)がある。ここではこの3つの機器の概要について説明する。

 

3.1 AIS

海難事故の防止と事故後の対応のために船舶の交通管制が行われているが、この場合に最も重要な機能が相手船の識別である。この問題は古くから検討され、船体や甲板に船名を大きく書く等の案が検討されたが、実行に移されてはいない。しかし、最近の通信機器技術の進歩により、船舶を自動的に識別する種々の方法が提案され、その検証が進められている。こうした船舶の自動識別が可能になると、船と陸、船と船の間で通信することが可能となるので、VTS(Vessel Traffic Service Systems)、船の衝突防止、船舶通報(Ship Reporting)、探索救助(Search and Rescue)等に役立つ。

今回のSOLASV章の改正で、総トン数300トン以上の国際航海に従事する船舶及び総トン数500トン以上の国際航海に従事しない船舶に搭載要件が課されたAISについては、NAV43での審議を得てMSC69(1998年5月開催)で採択された性能基準2では、VHF-DSC(Digital Selective Ca11ing)技術を利用した2-S方式(DSC方式)、あるいはSTDMA技術を利用したユニバーサル方式(4-S方式、STDMA方式、放送方式)を採用するかを巡り深い審議がなされたが、結果、機能要件化された基準とすることとなり、規定された機能を満足すれば方式は問わないこととなった。しかしながら、この性能基準は、通報容量について2,000レポート/分を要求しており、現段階ではユーバーサル方式のものしか対応できないものとなっている。したがって、船舶に搭載されるAISはユーバサル方式のAIS(以下、「ユーバーサルAIS」という。)となることが想定される。

 

1) DSC方式:IALAの要求性能を満たすべく開発されたシステムで、交信したい相手を選びディジタル信号を送って交信する方式で、主として船と陸の間の通信などVTSで使われている。この方式でも船と船の間で通信することは可能であるが、選択が手動であることもあり通信できる船の数は制限される。

 

2) STDMA方式:STDMAはSelf-Organized Time Division Multiple Accessの略で、時間分割多元接続方式による通信方式である。この方式では多くの情報を自動的に高速で送ることができるので、船対陸、そして船対船の間の通信として利用できる。

 

2Resolution MSC.74(69)ANNEX3-Recommendation on Performance Standards for Universal AIS

 

 

 

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