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簡易解析の対象とした各サイズのタンカー全数の結果から、最大縦曲げモーメントに対して主船体縦曲げ最終強度が一致する(安全率が1.0となる)ときの断面係数の限界はZreqの約83%である。多少安全側を取って85%を縦強度上の衰耗の限界値とすることが出来る。

 

断面係数が新造時の85%になるとき、3-3に示したように、フランジ面積の衰耗率はほぼ85%のときである。このことから、フランジ面積の衰耗率が85%を強度評価するための条件とする。3-2の図3から、衰耗の個船毎のばらつきを考えて、断面係数率を85%より多少余裕を持たせて、強度評価を行う条件として船齢10年以上とすることは適切であろう。逆に10年未満船は問題ない。

現在就航している世界中のタンカーの大多数は、IACSメンバーである船級協会の検査を受けていることから、フランジ面積の減少量が15%に達する前に切替え工事を実施することが多く、この面積減少量15%という値を縦強度評価を開始する判断の値とすれば、縦強度の評価を行う必要のある船舶はかなり限られたものになる。

 

3-4 船長と断面係数

図6に、新造時の実際の断面係数Zactとルールが要求している断面係数Zreqとの比を、船長との関係で示す。小型船では局部強度の要求で寸法が決まり、縦強度には余裕がある。40KDWT以上の比較的大きなタンカーでは、ZactとZreqはほぼ等しい。小型船もZreqの85%が崩壊強度に対する安全率1.0を与えるとすると、フランジ面積の最大の衰耗率を27%(局部衰耗限界相当)とするときの安全率1.0のZactは次式からもとまる。

(1-0.27)x Zact>0.85xZreq

したがって、Zact/Zreq>1.2であるならば、最大衰耗に対しても縦強度を確保できる。データのばらつきを考慮したとしても、船長L=130m以下ならば縦強度は確保できるので、縦強度評価要求から130m以下の船は除くことが出来る。

 

4. 強度評価

 

以上の3条件を満たす老朽油タンカーは、強度評価を要求されるが、計算そのものは容易なものである。

既に決議A.744(18)のESPで強制化されている定期検査の板厚計測結果を利用して断面係数を行うことが要求される。ただし、ロンジと板材との隅肉溶接は有効な状態であることが前提とされている。もし、衰耗により隅肉溶接が健全でないなら計算された断面係数は意味を持たないので、強度評価は無効となる。

強度評価は、計算された断面係数がルールで規定している要求断面係数の85%以上であることを確かめることになる。

 

 

 

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