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上段の水平線は(設計)許容静水中曲げモーメントを想定したときの最大作用モーメントを示す。41KDWTタンカでは、標準的積み付け状態が最大モーメントを与えている。崩壊強度と作用モーメントを比べると、乱暴に言えば、最大衰耗状態では、Sagging状態におけるSuezmax級で強度が15%程度不足になり、Hogging状態にある他のタイプでは多少余裕があることを意味している。中間衰耗状態では、作用モーメントに対し112%ないしは137%程度の崩壊強度が有ることがわかる。

なお、新造時では、134%から162%の崩壊強度を有している。ただし、実際の標準的積み付け状態を考えると、静水中曲げモーメントはSuezmax級やVLCCでは(設計)許容静水中モーメントよりも小さいことが通常であり、このことを考慮すると、強度の余裕は増すが、ここでは許容静水中モーメントが、許容したからには船体に作用する可能性があると考えることにする。

他の計算結果を含めて考えると次のことが言える。新造時のタンカーの主船体縦曲げ最終強度に対する安全率は概ねHogging状態で1.5から2.0になる。Sagging状態では、1.3から1.6になる。中間衰耗状態で主船体縦曲げ最終強度に対する安全率は概ねHogging状態で1.2から1.7になる。Sagging状態では、1.0から1.3になる。最大衰耗状態でも主船体縦曲げ最終強度に対する安全率は概ねHogging状態で1.0から1.4になる。ただし、Sagging状態では、0.8から1.0になる。

 

3-2 衰耗と断面係数との関係

油タンカの甲板部および船底部における衰耗量の計測結果から、断面係数の減少率と船齢の関係を示したのが図3である。ここでは、VLCC4隻、Suezmax級10隻、,Aframax級4隻、40KDWT級7隻を対象としている。これによると、船齢10年では対象船のうち最悪のもので、断面係数は94%となっていて、20年で89%である。

フランジ面積の衰耗量と断面係数の減少率の関係を求めたものが図4である。対象船は、3-2と同じである。船のタイプによらず、次の関係が近似的に成立することが同図からわかる。

断面係数の減少率=フランジの衰耗率

 

3-3 縦崩壊強度と断面係数の関係

船体が折損するかどうかを検討するとき、真に知りたいのは船体の崩壊強度である。しかしながら、設計時に崩壊強度を正確に知ることは現時点ではそれほど容易ではない。計算は断面係数を求めるほうが遥かに容易である。ルールにおいてはも、崩壊強度代わりに断面係数を用いて縦強度を規定している。

断面係数を用いて設計している船が、どれぐらいの崩壊強度を有しているかを調べて見よう。崩壊強度と断面係数との関係を調べるために、両者を簡易解析法で計算したところ、図5のような結果を得た。

簡単のために、縦強度に全く余裕がなく規則要求どおりの断面係数で建造された船舶について考える。船型によってバラツキは有るが、一般的にSagging状態で厳しく、崩壊強度が最大曲げモーメントに一致する限界の断面係数は、新造時のほぼ80%内外であることがわかる。特に上甲板側の断面係数が新造時の83%を下回ったとき、Sagging状態における船体縦強度は、最大曲げモーメントに対して100%以下となり、余裕がなくなる。

 

 

 

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