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(5) バラスト水中の有害海洋性生物の移動を規制する新条約

他のIMOの重要な審議案件としては、バラスト水中の有害海洋性生物の移動を規制する新条約案の検討があり、本年6月のMEPC43では基本概念の整理も得られなかったことから外交会議の開催の目処は立っていないが、バラスト水の交換を洋上で行う場合の安全性等解決すべき事項があり、これについては我が国において十分検討して、IMOの審議に対応することとしている。

(6) 船舶のリサイクリング問題

今後審議が予想される案件として船舶のリサイクリングの問題があり、本年6月のMEPC43では作業計画の審議において、検討課題とすることを求める先進国と、IMOで検討議題とすることに反対する解撤の実施国との間で意見が分かれたため、次回会合で議題に取り上げた上で今後の方向性について再度検討されることとなっているが、欧州各国が強くIMOでの検討を求め、環境団体が解撤問題の政治的キャンペーンを張っていることから、IMOで議論する方向で進展する可能性が高い。我が国としては、IMOには海事関係者が集まり、便宜置籍国の存在等、船舶特有の事情をよく理解した上で検討できることから、本件はIMOで検討することが適当と考えている。

(7) MARPOL条約附属書VI(船舶からの大気汚染の防止)に関する議定書

1997年に採択されたMARPOL条約附属書VI(船舶からの大気汚染の防止)に関する議定書については、発効要件が15ヶ国以上の加入かつ加入国の船腹量が世界の船腹量の50%以上となっており、現在のところ、発効の目処が立たない状況にある。97年の採択時に、我が国は発効し易い発効要件を提案したが、MARPOL条約の発効要件に合わせる意見が大勢を占め、現在の発効要件となったものであるが、採択後5年以内に発効しない場合に条約の見直しを行うこととされている。我が国としては、船舶からの大気汚染防止に関する規制は、世界的に実施されることが重要と考えており、発効要件やその他の発効を困難にしている要因を検討するとともに、早期発効に向けた対応方策について検討中である。

(8) 旗国の責任

IMOが近年特に重視している問題は、サブスタンダード船の存在であり、FSI小委員会における審議等を通じてPSCの強化等を図ってきた。

PSCの結果については、各国及びパリMOU、東京MOU等からFSIに報告され、航行停止処分の隻数等が国別に明らかになることなどから、一部の国においては、航行停止処分を受ける事例が減少する結果が示されるなど、FSIにおける活動が一定の効果をあらわしている。

FSIにおいては、かつて条約を履行していない国に対する制裁措置をも視野に入れた新条約の提案があり、先進国と途上国との間で意見の対立が先鋭化したことがあった。現在は、旗国の自己評価様式を定めて各国に回答を求め、条約の履行を実施する意思がありながら困難のある国に技術的援助を行おうとする方向で議論が進められており、自己評価様式については、本年11月の総会で総会決議として採択された。旗国の自己評価様式の使用方法については、途上国側が強い懸念を持ち、今後も議論が行われると予想されるが、我が国としては、基本的に旗国が条約履行の責任を果たすことが重要と考えており、自己評価様式を用いたFSIの活動を支持し、旗国責任が達成される有効な方策の検討に前向きに取り組む方針である。

 

 

 

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