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(The State of the Netherlands v.Bergings-en transportbedrijf Van den Akker and Union de Remorquage et de Sauvetage, and the State of the Netherlands v. Dissotis Shipping Corporation, Supreme Court, 7 February 1986, RvdW(1986)No. 44, S & S(1986)No. 61, NJ(1986)No. 477, Netherlands Year Book of International Law(1987), at pp. 402-407、拙稿「『危険または有害性』を内在する外国船舶の領海通航」、『海洋法事例研究』1号(日本海洋協会、1993)、37-38頁。

(3) 中村洸「核積載軍艦の領海通過について――領海条約の解釈とソビエト事故原潜に対する適用」『法学教室』13号、94頁以下。この事件では、日本政府は同軍艦の通航は、領海条約上、無害通航にあたらないとして、領海入域前の段階では日本領海に侵入しないように警告するとともに、領海侵入後は領海からの退去を要求し続けた。領海通過後の段階で、日本側はソ連政府の回答を考慮して、事後的に領海通過の態様自体を検討すれば、「今後とも放射能汚染が生ぜず、核搭載の事実がないとの前提に立つ限り、無害通航と認識することができる」という統一見解を示した。本件の場合は、ソ連側の回答および日本側の調査を含み客観的にも周辺海域に放射能漏れのないことが確認されていた事例(中村、98頁)とされているが、本稿が問題とするのは、核搭載有無の問題は別として、日本側がそうしたように、沿岸国が当該事故船舶からの放射能汚染の危険性について満足な回答を得られない場合に、当該船舶の領海入域を拒否する権限がありうるとすればいかなる場合であるか、また何を法的根拠としてそのようにいえるかという問題である。

(4) Erik Jaap Molenaar, Coastal State Jurisdiction over Vessel-Source Pollution(1998), pp. 198,esp. footnote(13), 265-266, also see Hakapaa and Molenaar, Innocent Passage――Past and Present, 23 Marine Policy, no. 2(1999), pp. 131 et seq., esp. 140.

(5) コルフ海峡事件において国際司法裁判所は、通航の態様(manner)が有害性を認定する決定的な要因であると述べており、沿岸国に脅威を及ぼすような通航でない限り無害性は維持されるという考え方をとっているので、沿岸国法令への違反があっても、無害性が維持される場合もあることになる。同、Churchill and Lowe, Law of the Sea(3rd ed., 1999), p. 83.

 

 

 

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