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また、毒を生産する植物プランクトンも知られていて、これらが大量に発生して赤潮状態になると、魚介類の斃死を起こしたり、貝類を介して人間の健康にも被害が及ぶ。

このような赤潮発生の対策としては、赤潮生物の発生原因と関連する水質と底質の環境改善が重要である。一方で、より即効的な効果が期待される方法として、化学薬品、粘土、鉄粉などを散布して赤潮生物を殺滅したり、揚出した赤潮海水を遠心分離器にかけて生物だけを回収したりするものがある。これらの方法は、赤潮が魚類養殖いけすに近づき養殖魚が斃死する可能性がきわめて高いときなどに、局所的に使用する方法であるが、実用化はされていない。これに対して、赤潮生物を除去するだけでなく、広域赤潮発生モニタリングと情報連絡網の整備が進められ、養殖いけすの赤潮非発生海域への移動や、赤潮生物発生水深以深への沈下についても可能性が検討されている。

赤潮生物に対して、直接攻撃ではなく殺藻物質を生産して殺藻作用を示す殺藻細菌が分離されている。将来的にマリンバイオテクノロジー技術の進歩により、海水中の多くの細菌が殺藻物質を生産するように人為的に誘導する技術が開発されれば、赤潮の駆除も実現可能となるかもしれない。また、最近では、殺藻細菌とは異なるが、赤潮生物を含む植物プランクトンの死滅にウイルスが関与していることが知られるようになりつつあるり、将来、ウイルスが赤潮の防除に使用可能になれば、特定の種のみに効く環境に優しい微生物農薬になり得ると考えられている。

 

b. 青潮

青潮とは、夏から秋にかけて表層の海水が淡緑色に濁る現象である。河川などから流入してきた有機性の汚濁物質や、植物プランクトン起源の有機物が海底に堆積すると、底層で有機物質の分解が進行する際に、溶存酸素があるうちは好気性のバクテリアが働くが、酸素が消費し尽くされてしまうと、嫌気性のバクテリア(硫酸還元細菌)が働き出して硫化物イオンを生成する。青潮の着色は、この硫化物イオンが表層で酸化され生成するコロイド状硫黄による光の散乱が原因である。底層にある無酸素水塊が、風の力で岸側に寄せられ、海底面に沿って湧昇すると青潮を発生するが、このとき、浅海域海底に生息するアサリやカレイなどに大きな被害を及ぼす。

青潮発生の対策としては、内湾に供給される有機物の量を減少させること、または供給された有機物の酸化状態での浄化を促進する必要がある。前者は、陸域での生活排水、工場排水からの窒素、リンの付加量を削減させることが必要である。後者については、アサリ等の二枚貝による生物的浄化が代表的な例である。これらの生物浄化を行う生物量は、垂直護岸や人工干潟よりも自然干潟とそれに続く潮下帯の方が圧倒的に多い。

 

 

 

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