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[参考文献]

・中埜岩男、“海洋音響トモグラフィーとATOC”、電子情報通信学会誌、81、5、488(1998).

・前島芳充、中埜岩男他、“200Hz海洋音響トモグラフィーシステムの時間計測手法”、海洋科学技術センター試験研究報告、37、119(1998).

 

3.2.6 バイオテレメトリー

 

(1) 概要

 

野生生物の保護、特に希少種の保護は厳しい漁業規制を誘起しており、漁業などにおいて、対象生物以外の捕獲を回避するために野生生物の行動生態情報の把握が不可欠となっている。生物の生理生態または生息環境を遠隔的に測定する手法は、バイオテレメトリーと呼ばれており、野生動物の行動形態の計測手法として知られている。バイオテレメトリーには、追跡型、設置型、回収型など様々な方式があるが、長期にわたるグローバルスケールの生態観測には人工衛星テレメトリーが適しており、広大な海洋においてもこの人工衛星テレメトリーは有用である。

 

(2) 主要な技術の現状

 

1978年に、後述するアルゴスシステムが運用され始め、1998年には生物追跡件数(陸上も含む)は約1,300件に達している。また、日本では1979年にテレメータ利用による動物探査が紹介され、バンドウイルカ、オットセイ、ツル、海亀などの追跡が試みられている。日本における1998年の生物追跡件数は、約60件である。現在、生物追跡に最も多く利用されているのが、米国、フランスの共同開発による人工衛星を用いた位置及び環境データの収集システムであるアルゴスシステムである。同システムは、送信機、受信機、情報処理伝達処現装置から構成されている。受信機は、気象衛星NOAAに搭載されており、通常2機(1999年3月現在4機稼動)で情報が提供されている。

なお、我が国では、鯨に焦点を当てた鯨生態系観測ミッションが計画されている。これは、専用小型衛星を用いて地球規模で移動する鯨の生態を把握するシステムを構築しようとするものであり、同システムは、高度約1,000kmの極軌道を周回する小型衛星(重量約50kg)、鯨に取り付けられた生態データプローブおよび衛星追跡管制用地上局から構成されている。

 

 

 

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