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3.2.5 海洋音響トモグラフィー

 

(1) 概要

 

音響トモグラフィーは、観測対象である海洋を音源と受波器で取り囲み、音波を用いて海洋の断面を切り取り、それらの情報をコンピューター内で組み合わせることにで海洋内部の立体的な音速分布を再現するものである。1981年に米国のグループによりバミューダ島西方海域において実施され、冷水渦の観測に成功して以来、各国の研究者の努力により海洋観測技術として確立されつつある。

 

(2) 技術の現状

 

欧州では、地中海に250Hzと400Hzの音源・受波器・トランシーバーを組み合わせたネットワークを組み、1994年1月から10月までの約10ヶ月間の観測を行い、地中海表層における海水の沈み込み現象の観測に成功している。また、我が国においては海洋科学技術センター(JAMSTEC)が、200Hz超磁歪音源を中核とするシステムを独自に開発している。表3.2.5-1にJAMSTECにより開発された音響トモグラフィーシステムの代表的な性能を示す。JAMSTECは、1995年に1,000kmの音波伝搬実験を実施し、広域同時のリアルタイム観測に成功した。図3.2.5-1に1,000km離れた2点間の水温分布の断層像を示す。また、1997年には、開発されたシステムを5基設置して、1,000km四方のリアルタイム3次元トモグラフィー観測が実施され、3次元の水温分布を時系列で観測することに成功した。現在、同センターが音響トモグラフィーを用いてエルニーニョ時の海洋内部を解析する計画が進行中であり、すでにトランシーバ5基が1999年1月に設置され、同年12月までに3基を追加して合計8基体制の観測システムが稼動予定である。(1999年8月現在)なお、海洋音響トモグラフィーの技術をもとに、地球温暖化に伴う海洋全体の水温上昇の検出を目指すATOC(Acoustic Thermometry of Ocean Climate)計画が米国を中心に進行中である。

 

表3.2.5-1 JAMSTECにより開発された音響トモグラフィーシステムの性能

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