3.2.3 海中コミュニケーション
(1) 概要
地上においては、ディジタル技術の進歩およびコンピュータの普及によりディジタルデータ通信が主流になってきている。このような通信は光を用いて行われており、その光技術の進歩や光ファイバー、衛星などのインフラ整備により大容量高速のデータ通信が可能になりつつある。
また、海中での通信も地上と同様に有線と無線のものがある。有線通信は、海中ロボットと支援母船の間などに利用されており、電線や光ファイバーが用いられている。特に光ファイバーに関しては、細いケーブルで大量のデータを送ることが可能となってきている。ただし、海中で通信のための索があることは、ロボットもしくは船などの動きを制約するなどの問題が生じるため、索を経由しない通信手段がより重要と考えられる。したがって、本節では、索を有しない海中での通信について述べる。
地上においてはデータの伝送手段の主流は電波や光であるが、海水は塩分を含むため弱い導電体であり、通常の電波や光はほとんど伝搬しない。一方で、音波は海中での伝搬損失が小さいため、音波、特に超音波による情報通信伝達が有力な無線通信の手段となる。音波を利用した海中での通信には、音声に代表されるアナログ通信だけでなく、地上と同様にディジタル通信が用いられている。なお、本調査では、コミュニケーションという観点から、音声、画像およびコマンドなどのデータ通信を対象とした。
(2) 主要な技術の現状
1] アナログ通信
代表的なアナログ通信技術として、有人潜水調査船と海上支援母船間およびダイバー用の海中通話装置などが挙げられる。前者に関しては、「しんかい6500」に搭載されているような深海探査用の通話器などがある。後者に関しては、商用として発売されており、性能の向上が求められている。例えば、1999年4月に交信範囲が最大500m、最大水深40mの超音波トランシバーが冨士工業から発売され、また、潜水士の呼吸音をカットした水中通話装置なども発売されている。表3.2.3-1に超音波トランシーバーの仕様及び比較のためにダイバー通信機として広く用いられている米国SCUBAPHONE社の製品の仕様を示す。また、ダイバーに対する安全確保のため、音響信号で情報をダイバーに直接伝えることを目的として、ヒトの水中における聴覚の基本的な特性に関する研究も進められている。