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1. 研究開発の目的

 

現在、食用油は国内で年間240万トン生産されており、使用後はその約6割が回収されてゴミとして焼却され、残り4割が生活排水として下水から河川を通して海域や湖沼に放出されている。河川や海域に放出された廃食用油、植物油等(以下「廃食用油等」という。)は酸化分解してCO2となり、大気中に放出されるがその酸化分解の過程で水中の酸素を消費し、水中生物の死滅や、水質の汚染を引き起こしている。全国の河川、海域、湖沼の水質基準達成率は10数年の間、ほとんど改善されておらず、水質汚染原因の2/3以上が生活排水によるものと報告されている。このことから京都市、大阪市等では廃食用油の放出を防止するだけで河川の浄化が進むと考え、一般家庭までに及ぶ廃食用油等の回収運動が盛り上がっている。現在、回収された廃食用油等を活かし、新しい熱源としてリサイクル等が行われているが、リサイクルコストが高額になる等容易には普及していない現状である。

そこで本事業では、できる限り手を加えずに廃食用油等を低コストで処理できるシステムの構築を目指し、現在当財団が研究開発を行っている遮熱型セラミックエンジンの燃料源として、回収した廃食用油を利用し、クリーンに燃焼できる処理システム研究開発を行い、CO2の低減及び河川、湖沼、海洋の水質汚染防止に貢献し、海洋環境の保全に寄与することを目的とする。

 

2. 社会的背景と開発の必要性

 

1997年12月に京都市にて地球温暖化防止京都会議が実施され、地球温暖化の原因物質であるCO2の削減率が決定された。この削減率はきわめて大きな数値であり、その達成のためには産官共に新たな技術開発に全力を傾注する必要がある。

この国際会議において開催地である京都市は、市が実施している廃棄物のリサイクル運動や省資源運動についてアピールした。この運動の一つに廃食用油を回収し、バイオ燃料に化学処理してディーゼルエンジンの燃料として再使用する試みを紹介した。この試みをマスコミが取り上げ、現在、他の多くの自治体が関心を寄せている。

環境白書は全国の河川、海域、湖沼の水質基準の改善が遅々として進まず、中央環境審議会は水質汚染原因の2/3以上が生活排水によるものであると報告している。この為、一般家庭まで含めた廃食用油の組織的な回収が水質改善対策にとって不可欠な事柄である。回収された廃食用油が単に焼却処理されるだけでなく、有効なエネルギー源として利用される事も重要である。この生活排水として放出される廃食用油を回収し、ディーゼルエンジンの燃料として用いると、2トン積みのトラック50万台を1年間走行させる事ができ、軽油の消費量が減るので、その分だけCO2の低減に繋がるとともに河川、湖沼、海洋の水質汚染防止に貢献する事ができる。

廃食用油をディーゼルエンジンの燃料として普及させる為には、

I. 社会環境の整備として京都市が実施中の諸政策の推進

1]廃食用油の回収を行う組織的な動きとインフラの整備

2]廃食用油を燃料として用いるユーザー意識の高揚

 

 

 

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