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影響因子は環境要素の生態数に影響をあたえる。ある一つの階層に対する影響は、その上の階層の環境に影響し、ひいては全体に悪影響を与えることになる。北極海の食物連鎖は、他の海域と比べると単純であると言われているが、その関係は十分に分っていない。この食物連鎖のある階層で汚染が発生すると、上位の階層に汚染が波及し、最後には、汚染の蓄積は北極海域に住む先住民族に及ぶことになる。

広大なNSRには、生態系の全ての階層に及ぶ実に多くの生物が存在するが、INSROPのプロジェクトでは、結果的に全ての生態系について評価できないことから、限定した優先度の高い問題に対して環境評価を行っている。即ち、INSROPでは、環境評価の指標として、船舶の運航状況や生息場所などを考慮し、重要度の高い生態系要素(Valued Ecosystem Components)をスクリーニングし、代表値として選定した(表4.5-1)。これらの全てについて十分なデータが得られた訳ではないが、データは4.6節に述べる地理情報システム(GIS)に入力され、動的環境地図(Dynamic Environmental Atlas)としてデータベース化されている。一例として、4月のホッキョクグマの分布例を図4.5.4に示す。これらのデータは定量性に乏しい欠点は否めないが、INSROP事業の成果として、初めてロシアから提出された貴重な資料であり、4.5-4節で解説する環境評価に欠かせないデータである。

 

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図4.5-3 北極海の食物連鎖の概念

 

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図4.5-4 ホッキョクグマの分布

 

 

 

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