日本財団 図書館


Hydrobaseからダイバー、航行設備の補修、航行情報等の提供が受けられる。浮きクレーン及びタグボートを有する。医療施設、郵便、電信・電話設備及び空港がある。

●ゼレニー(Zelenyy Mys)

コリマ河にある港湾。入港には水先案内人の乗船が義務付けられている。碇泊地において揚荷。医療及び郵便サービスがある。空港のあるチェルスキー(Chersky)までバスによる移動が可能。

●ペベク(Pevek)

チュコトカ自治管区チャウンスキー地方の行政中心都市である人口1万人のペベク市近郊の港湾。ペベク市には、医療、郵便施設、銀行及び空港がある。

●プロビデニヤ(Provideniya)

チュコト半島のプロビデニヤ湾にある港湾。湾内の水深は30〜35m程度であり、描地の水深は9m。医療及びタグボートのサービスを受けることが可能。Provideniya Hydrobaseより航行情報の提供がある。

以上の港湾に関する情報は、INSROPレポート(WP-17)に基づく情報である。従って、前述の運航支援設備に関する記述同様、上記の港湾機能についてもその後の変化の可能性があることを記しておく。

 

(3) 通信

NSR上においては、船舶の航行に対する管制、氷況情報の送信等を目的とした無線通信システムが構築されている。この無線通信システムは、東経125度を境界として東西に分かれる。西側では、ムルマンスク、ディクンン及びアムデルマに通信センターがあり、東側では、チクシ、ぺベク、シュミット岬(Mys Shmidta)に通信センターが設けられている。NSRを航行する全ての船舶は、中波帯の通信により該当海域の通信センターと常に交信ができる状態を保つとともに、定期的に船位等についての報告を行うことが義務付けられている。この他、氷況観測の航空機との通信あるいは砕氷船によるエスコートまたは船団を組んでの航行時における船舶間の通信はVHF通信(122.5MHz)により行われる。

無線通信は、時として磁気嵐の影響を受ける。磁気嵐は25から30日程度の周期を持って繰り返される。一回の磁気嵐の継続時間は通常数時間であるが、時には1日以上にわたって影響を及ぼす場合がある。磁気嵐はオーロラの発生帯において最も顕著に発生する。これによる通信障害が出易い海域は、ノバヤゼムリヤの北側北緯72から74度にかけての海域、セベルナヤゼムリヤの北側の海域、オビ河及びエニセイ河の河口域である。

無線通信は、船舶間、船舶と航空機間あるいは船舶と地上基地間といった比較的近距離の通信に利用されるのに対し、異なる海域において航行している船舶間あるいは船舶と旗国間の通信といった遠距離通信には衛星を経由する通信が利用される。NSRを航行する船舶は衛星通信施設を装備することが要求される。NSRにおける衛星通信については、衛星による船位決定手法と同様に、現在世界で標準的に使用されているINMARSATによるものと、ロシア保有の衛星OKEANによるものの二種類の通信が可能である。

NSR領域をカバーするINMARSAT衛星としては、インド洋上空東経64度に位置する衛星(IOR)と太平洋上空東経178度の衛星(POR)の2衛星がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION