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3.2.3 海氷

 

海面に浮いている氷の総称を浮氷といい、海水が凍った海氷と、陸から流れ込んだ川や湖の氷、氷河からの氷山、棚氷からの氷島を含む。北極海は、南大洋に比べて氷山や氷島の数が少ない。

海氷の用語、分類は巻末資料にまとめてある。海氷生成時の薄い氷を経ると、厚さ30cm以下の板状軟氷、30cm以上の一年氷となる。氷点下の日平均気温の絶対値を毎日加えた積算値を、積算寒度と呼んでいる。成長中の海氷の厚さは、積算寒度の平方根にほぼ比例することが知られている。一年氷が夏を越えて次の冬を迎えると二年氷、さらに冬を重ねると多年氷となる。多年氷の厚さは、積み重なりや融解の程度によってまちまちであるが、平坦部の厚さは3〜6m位に達するものが多い。

海氷は塩分を含む。海水が凍るとき氷の結晶格子に塩分が入ることはないが、塩分濃縮された海水(ブライン)が純氷の結晶片と結晶片の隙間に閉じ込められるからである。海水は1kg中に35g位の塩分を含むので、重量千分率で塩分35パーミル(‰)と表現する。海氷の塩分は海氷を融かした融け水の塩分で定義する。生成直後の海氷は10‰前後の塩分を含むので、海氷生成時に約3分の1のブラインが海氷の中に閉じ込められ、約3分の2のブラインが下の海水に流れ落ちたことになる。海氷中のブラインは時間とともに抜け落ちるので、厚さ1m位の1年氷の塩分は4〜5‰、多年氷は表面は塩分をほとんど含まず、下層の塩分も2〜3‰に減少している。海氷中のブラインは温度に対する平衡濃度を保ち、温度が下がると氷を析出して濃縮し、温度が上がると周囲の氷を融かして塩分の薄いブラインとなる。海氷の強度は海氷中のブラインや気泡の含有率に大きく依存するので、春になって気温が上がると、海氷が急速に脆くなるのに驚かされる。氷盤の集合体としての海氷域は、その広がりの差し渡しが10km以下のものを流氷原、10km以上になると流氷野と呼び、大きさによって小流氷野、中流氷野、大流氷野に分けられている。海氷の密接度が7/10以上で、面積が1,000km2を超える大海氷域は、アイスマッシフ(大水域)と呼ばれる。

北極海の多年氷がつくるアイスマッシフは、北極海大氷域と呼ばれ、カナダ側とシベリア側とに分けられる。その周辺部の張出しは、スピッツベルゲン、カラ海北部、タイミル、アイオン、ウランゲル、アラスカなどの名を付けて呼ばれている。沿岸部にも、比較的安定した大氷域が現れる海域があり、ノバヤゼムリヤ、セベルナヤゼムリヤ、ヤナの名が付けられている。

 

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北極海のアイスマッシフ(Romanov, 1994)

 

 

 

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