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しかし、氷況の経年変化は著しく、夏季航行と言えども不慮の事態を招く危険と背中合せの航海であるとも言えることから、インフラストラクチャー整備に関る具体的なシナリオを策定することが必要である。また、事故等による海洋汚染発生時等に対する危機管理については、管理計画は策定されてはいるが、具体的な汚染防止、防除に関る実行計画に不安があり、汚染補償の見積もりが難しい。

北極海航路を航行するには、氷海中航行についての充分な経験が求められる。また特に、支援砕氷船の支援行動下での操船については、特殊な操船モードでもあり、時々刻々での正しい操船判断には支援モードでの充分な経験が要求される。乗組員としての実航海経験を重ねることが先ず大切ではあるが、操船シミュレータによる訓練などを取り入れる必要があろう。ロシア側からの経験豊かな水先案内人の乗船指導は、航行距離が長大であり、航行時間もかなりの長時間となることから、問題がない訳ではない。

 

現在、北極海航路に関して、ロシアの経済的混乱もあって、これらの条件が全て満たされている訳ではないが、ロシア経済の復調を前提にすれば、近い将来、いずれの要件も満足されるものと考えられる。氷海中の航行は、ごく近い将来人工衛星ベースの航法が主流となることは間違いなく、その意味では、北極海航路啓開の技術的準備は整いつつあると言える。

 

 

 

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