日本財団 図書館


(2) 二次災害の防止

1]原油の流出の場合、油種によっては原油ガスによる引火性、有毒性の問題がある。

防除活動は、ガス検知を行い、安全を確認しつつ、引火性ガスの影響のない海域で行い、ガスの存在する海域には防爆型の船舶以外の船舶は立入りを避けるべきである。

昭和40年室蘭港で発生したタンカーの爆発事故は、海上に流出した原油の中を作業船が航行し、その際機関が吸引したガスにより異常燃焼が起こり引火した等の原因が考えられている。また、これらの原油ガスの中に人間が長時間晒されるとガス中毒となり最悪の場合死亡例もあり、油種によっては硫化水素ガスを含む油もあるため、有毒性には注意を払う必要がある。

2]船舶による防除作業は、風浪による船体動揺、油により足場が滑りやすい、ひどい汚れ作業、そして重量物も取扱うことが多い等、作業環境が悪い。作業員の労務管理を行う中で、労働災害発生の予防や、保健衛生への配慮を行い、作業に当たる者を臨時の傷害保険に入れ、緊急時の応急措置、病院、救急車の確認を行っておく。

 

(3) 防除計画

流出油事故の発生の蓋然性の高い港湾、桟橋周辺、タンカー航路周辺等では、災害を想定して「緊急防除計画」をあらかじめ作成し、関係者は、定期的な訓練等を通じて基本的な事項を理解し、発災時には、まず日頃考えていた手段を間髪を入れず即手配、投入することで、素晴しい初期対応の成果を上げることができる。

防災計画は、付近を航行するタンカー等の船舶の座礁や衝突の海難の事例を想定して、事故発生海域、油種、流出量等に対してどのように対応するのか、防除の目標をどのようにするのか、調達が可能な油回収船、資器材があるのか、どのような体制で運用するか等について、机上で検討しておく必要がある。

 

2. 防除処理の実施

 

防除処理の実施に当たっては、官民一体となった防除体制を確立し、関係機関の有機的連携のもとで作業を進める必要がある。

大規模な油の流出事故は現代社会における災害の一つとして、「災害対策基本法」等の中で位置付けられ、各都道府県、市町村は、地域防災計画を策定しきめ細かに支援体制を取り決めている。

災害に対して、責任を有する原因者だけでなく、公共の財産を護る責任を有する国、地方自治体、関係する民間による責任範囲、役割分担を明らかにし協力して被害を抑制するための防除体制を確立する必要がある。

大・中規模の流出事故では、一般的には「災害対策基本法」に基づき、都道府県、市町村等の地方自治体は、自ら作成している「地方防災計画」により防除体制をとり、自衛のため対応することとなる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION