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生分解速度に影響を与える主な要因は、温度および酸素と栄養素の量である。栄養素は主として窒素とリンの化合物である。各種の微生物はそれぞれ炭水化物の特定のグループを分解する傾向を有している。それらのうち一連のバクテリヤは原油中に存在している多様な成分を分解する能力を有するが、ある成分は分解されにくい。外洋中の微生物の固体数は、かならずしも、十分でないけれども、良好な条件の下では、栄養素または酸素の不足で制限されるまで急激に増殖する。

微生物は海水中で生きているので、生分解は、油水界面でのみ生じうる。それゆえ、高潮線よりも高い海岸に打上げられた油は、分解が極端に遅く、多年にわたって持続する。海中では、自然分散あるいは化学的分散によって油滴が形成されることによって生物学的作用の行われる油水界面が増大し生分解が促進される。生分解に影響する要因は極めて複雑であり、これによる油の除去率を予測することは困難であるが湿帯水域においては1日海水1トン当たり0.001〜0.03gという報告があり、慢性的な油汚染を受けている水域では0.5〜60gに達すると見られる。しかし油が沈澱物に組合わされると酸素、栄養素の不足から生分解速度は著しく低下する。

 

(9) 酸化

炭化水素の分子は酸素と反応する。そして、可溶性の生成物に分解するか、結合して、持続性のあるタールを形成する。これらの酸化反応の多くは、日光によって促進される。そして、その反応は油塊の存在する限り行われているけれども、油塊の消滅への影響は、他の風化過程と比較して小さい。強い日光の下で、薄い油膜は、1日当たり0.1%以下の割合で分解していく。高粘度の油または、油中水エマルジョンの厚い層の酸化は、分解作用よりも持続性を高める作用となる傾向が強い。これは高分子成分を生成し、これが外側の保護膜を形成するからである。例えば、タール質の堆積物が、しばしば、タールボールとして海岸に打上げられる。このタールボールは、通常、内部が軟質で、風化が進んでいない物質の外側を、沈澱粒子と結びついた硬質の殻が囲む構造になっている。

 

 

 

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