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粘度は、油の温度によって変化し、温度が高くなれば、粘度は下がる。重油の粘度は一般には、50℃で測定されるので、海上に流出した場合の油の粘度は、水温の影響を受けて測定値より粘度が高くなる。このような場合ある任意の温度における粘度を推定するには、ASTMの粘度−温度線図(対数グラフ)を活用する。通常の油はこの線図上では直線でプロットでき、粘度の異なる油もほぼ平行線を引くことにより粘度−温度関係を推定することができる。

粘度の単位は、絶対粘度(係数)(g/cm sec=Poise)、通常はその百分の一centi−poise(cp)、さらに絶対粘度をその油の密度(g/cm3)で割ったものを動粘度(係数)(cm2/sec=Stokes)その百分の一のcenti−Stokes(cSt)を用いている。

 

(3) 流動点

流動点は、その温度以下では、油が半固体となり、流れなくなる温度である。

油の性状データでは、凝固点が測定されているのが一般的である。凝固点は、油を冷却して流動性を失った最高温度(試験管を真横にして五秒間流動の止まる最高温度)であり、これより2.5度高い温度を流動点とする。

海上に流出した油は、低沸点成分が蒸発し、油の組成が変化することにより流動点も測定値より高くなる。

 

(4) 引火点

液体の発火は多くの場合、液面上に形成される可燃性蒸気の発火である。引火はこの可燃性蒸気と空気の混合物に他からの口火が作用して発火することをいう。

流出した油の表面から発生する可燃性蒸気は、防除作業を行う場合の安全性に関し、重要な要因となるものであり、特に軽質原油の流出時には拡散範囲に接近する場合には、ガス検知を実施する必要がある。

 

2. 流出油の変性(風化作用)

 

流出した油が受ける物理的、化学的変化は、一般に風化作用として知られている。油の変性に影響をおよぼす主要な要素は次のとおりである。

・油の物理的性質、特に比重、粘性、揮発性

・油の組成と化学的性質

・気象状態(海上模様、太陽光線、大気温度)

・海水の性状(比重、流れ、温度、バクテリアの存在、栄養分、溶存酸素、浮遊物)

これらの作用とそれらがどのように相互に油に働いて油の性質を変化させるかは流出事故に対処する場合に重要である。図IV. 1は、油が海上に流出した後の自然の中での作用を示す。

 

 

 

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