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また、経済活動に季節的変動があるので、雇用の永続性もなく、契約が一旦満了すれば、労働者は一時的に解雇される。さらに、国内造船所の設備、機器は旧式で陳腐化しているが、この悪条件は小型造船所で一層いちじるしい。しかし、外国資本との合弁造船所では、設備と既存技術の改善が可能なことが指摘されている。

業界の将来展望

新造船部門の発展。老朽船舶の代替、船舶金融、内航船隊近代化の計画を積極的に遂行しようとする現在の政府の姿勢からして、国内の新造船および船舶解撤の能力に対する需要は、今後の数年間に増加するものと期待される。

修繕船需要の増加。修繕船業界の市場の将来性には、明るいものがある。東アジア地域における海運活動の増加に伴い、老齢化しつつある内航・外航船隊のための修繕工事に対して需要拡大が見込まれる。さらに、フィリピン海域を通過する外航船の数は、ますます増加するに違いない。修繕船需要は、2000年には大幅な拡大が期待される。短期的には、5,000GT以下の小型船の建造が目標となる。業界が自信を深め、さらに造船能力を強化して行けば、5α000GT以下の中型船を建造することになろう。

外国の技術援助計画の利用と外国投資家にとって魅力ある投資機会。2000年に向けたフィリピンのビジョンを進めて行く過程で、造船業の発展に弾みをつけるには、新たな取組みが必要とされる。造船所の発展が加速すれば、海外の優秀造船所との合弁事業や技術提携に投資を呼ぶことが可能になり、また提携の相手先からは造船技術を導入できることになる。一部の外国造船所は、そのような事業への投資に関心を示している。

船舶研究開発センターの設立。業界では、先進技術の取得と労働生産性向上の必要性が痛感されている。これまでの検討により、以下のような点が国内の海難事故発生の誘因となっていることが判明した。すなわち船舶運航、探索・救助作業のシステムの不備、船舶の設計・建造・改造・修繕工事面の欠陥、そして有能な熟練船員・造船労働者の不足である。これらの問題は、小さいものも含めて、現在のフィリピンに欠けている適切な技術の振興と訓練の継続によってのみ、適切な解決が可能なのである。船舶の経済的耐用年数全期間にわたって耐航性を確保するためには、中古船であれ、新造船であれ、必要な調査、実験室テスト、海上試運転が絶対に必要である。一方、造船技術研究者、船舶検査官、その他の種類の技術者、技能者については、それぞれの職分で要求される任務が適切に遂行できるよう訓練が必要とされる。

SBSR優遇措置の利用。優遇措置の利用は、国内造船所の採算性を高めるのに役立つ。SBSR部門に対する優遇措置を定めた上下両院の法案は、依然として審議中である。これらの法案には、SBSR用機械、設備、資材、部品についての輸入税免除、付加価値税免除、一定期間の課税猶予などの優遇措置が盛り込まれている。

資料の出所

新造船・修繕船部門に関する1998年MARINA業務実績報告書、海事産業局、マニラ、1998年。

SBSR企業1998年度年次報告書、海事産業局、マニラ、1998年。

1998年度統計年報、海事産業局、マニラ、1998年。

 

 

 

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