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2. 普及啓蒙講演会

 

MIRCとしての普及啓蒙講演会開催は通例、年2回を予定しているが、今年度は国内では名古屋市で、第四管区海上保安本部との共済で開催した「海洋情報シンポジウム」を開催した他、国際版としてマレーシアのランカウイ島で、西太平洋海域(WESTPAC)の海洋データ情報交換計画(IODE)国際会議が開かれたのを機会に「海洋学および海洋科学に関する国際セミナー」を開催した。これらの講演内容については、MIRCの海のサイエンスシリーズNo.5「海のサイエンスと情報(II)」およびMIRC Science Report,No.6,「Climate Change and Oceanographic Data Management」(2000年2月発行)に収録してあるので、入手希望の方はMIRCサービス部門に連絡されたい。

 

2-1. 海洋情報シンポジウム「内湾の知識、そして防災と海洋情報との関わり 〜伊勢湾をケーススタディとして〜」

表題のような伊勢湾をテーマとした「海洋情報シンポジウム」を、第四管区海上保安本部との共催のもとで、1999年5月12日(水)13:00-17:00に、名古屋国際会議場1号館3階で開催した。そのプログラムは以下の通りである。

 

開会の挨拶 後藤光征(第四管区海上保安本部、本部長)

座長:西山晴一郎(第四管区海上保安本部水路部、監理課長)

○基調講演 伊勢湾の歴史と文化

福岡猛志(日本福祉大学、副学長・教授)

○特別講演 伊勢湾の流れと水質・生態系の仕組み

―貧酸素水塊や赤潮の発生と消滅機構―

藤原建紀(京都大学農学研究科、助教授)

○特別講演 生物資源の永続的利用と伊勢湾の環境

鈴木輝明(愛知県水産試験場漁場改善研究室、室長)

○パネル・ディスカッション (伊勢湾における防災と海洋情報が果たす役割)

コンビナー:

永田豊((財)日本水路協会海洋情報研究センター、所長)

パネラー:

藤原建紀

鈴木輝明

柴山信行(海上保安庁水路部沿岸域海洋情報管理室、室長)

宮本哲司(第四管区海上保安本部水路部、部長)

閉会の挨拶 永田豊

 

福岡教授の講演では、伊勢湾周辺の歴史と文化に海洋がいかに重要な役割を果たしてきたかを、多くの事例を上げて指摘された。藤原助教授は、ADCPや海洋短波レーダーによって明らかにされた伊勢湾の流れの観測結果を紹介されながら、流動場と貧酸素水塊や赤潮の発生・消滅機構の関連を説明された。鈴木研究室長は、干潟・藻場が持つ海洋環境維持作用を、二枚貝や多毛類等の大型底生生物の有機懸濁物ろ過作用を中心に説明され、赤潮や貧酸素水塊の1970年代からの増加傾向を埋め立ての進行にともなう浅海域の減少との関係を論じて、今後の人工干潟・藻場の造成による生物的環境の改善の可能性を観測や数値モデルを通して示された。パネル・ディスカッションでは、これらの議論を踏まえ、現在海上保安庁水路部や第四管区海上保安本部が実施している伊勢湾を初めとする沿岸域防災に対する取組みについての紹介を中心に討議が行われた。

幸い好天にも恵まれ、約220名の熱心な参加者を得て、広い会場がほぼ埋め尽くされて、成功裏に閉会することができた。

 

 

 

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