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進行がん患者の心理的特徴と援助の講義のなかで『終末期患者の希望は死の距離が近づくにつれて変化する(生きること→自分らしさの表現→死を超越すること)』という過程を学び、《最後まで死の時まで、人間らしく自分らしく生きることができ、自分の人生のしめくくりをすること。ただ死なずに生きているのではなく、自分の生を生ききることができるように支えることが希望を支えることである》と教えられ、長年の疑問を解くことができたのである。

緩和ケアとは『治癒を目的とした治療に反応しなくなった疾患をもつ患者に対して行われる積極的で全人的な医療ケア─WHO1989─』である。残念ながら、私の勤めている施設には専門の病棟はない。しかし、一般病棟でも緩和ケアを求めている患者はいる。またその必要もある。今回の学びを生かし、私のできるところから関わっていきたいと思う。そして、“死”というものに焦点をあてるのではなく、“生の全う”ということに焦点を当てつつ人間そのものをみつめ、また患者とともに死をみつめていけるものでありたいと考えるのである。

 

おわりに

 

人間そのものをみつめるとは、患者に興味を示すことである。患者とは、病気に支配された人ではなく、ずっと長いこと刻んできたその人の歴史の連続における生活のなかで生きてきた人である。その歴史ある患者そのものをみつめ、ひとりの人間として関心をもち、その人の前にでたとき、いま自分に何ができるであろうかと常に問い続けるものでありたい。

心は燃えつつも日々の穏やかな研修が終わり、今は戦場のような臨床の場に戻ってきている。意外にも医師が私の受けた研修に少なからずも興味を持ち、研修のことを聞いてきたり、悩んでいる胸のうちを話してくれた。医師も悩んでいる。もっともっと話し合わなければいけない。この研修を受けて得られたたくさんのことを伝えたり、実践を通し還元することが、快く研修に行かせてくれた病棟スタッフに対する恩返しにもなり、今後の私の課題でもある。

 

〔引用文献〕

1) 清水哲郎 看護に求められる倫理 月刊ナーシング Vol.19 No.3 1999.3 学研 p50

〔参考文献〕

1) 小島操子 終末期医療における倫理的課題 ターミナルケア Vol.7 No.3 三輪書店 1997.5

2) 小原信 倫理的判断のための基本的な考え方 ターミナルケア Vol.7 No.3 三輪書店 1997.5

3) 長谷川浩 末期患者を支えるコミュニケーション ターミナルケアVol.5 No.3 三輪書店 1997.1

4) 柏木哲夫 死にゆく人々のケア 末期患者へのチームアプローチ 医学書院 1978

 

 

 

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