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評論記事抜粋(紙面の都合で、一部省略して掲載しています。)

 

産経新聞 5月27日夕刊 粟飯原眞

……1993年に始まり、96年、今年と3年ごと開催のユニークなコンペは、世界の関心を大阪に引き付けて、今回も26ヵ国、48グループが予選、本選に精魂注ぐ演奏で栄冠をめざし、弦楽四重奏は英国、ピアノ三重奏はイスラエル、フェスタ部門でも英の打楽器四重奏が優勝した。

メルボルンのコンペが同時期に重なって米からの参加にブレーキがかかったが、テープ審査の段階で45ヵ国、200を超える応募は、第3回にして大阪のコンペに対する評価と権威が、確かなものになってきたことを物語っている。

コンクール部門では課題曲が厳格に設定され、その試練へのチャレンジが集中力を高めたと入賞者は口をそろえ、フェスタでは9人までという編成を除けば制約は一切なし、審査も公募の聴衆に委ねる、まさに先例がないコンペとして定着しボーカルはもとよりパフォーマンスも加えた演奏表現が生き生き。

なにより、このフェスタを後押ししたのが最初から名誉芸術監督に就任したイェフーディ・メニューヒン。3月半ばの逝去が惜しまれるが、遺族の許しを得て『メニューヒン金賞』と名を冠して功績をたたえたのも、清新を求め、音楽シーンの裾野の広がりを期すフェスタの今後の展開に大きな力を貸すことになりそうだ。

 

讀賣新聞 5月8日夕刊

大阪・いずみホールで、世界の48グループを集めて開かれた第3回大阪国際室内楽コンクール&フェスタ。室内楽に取り組む若手の登竜門にふさわしく、将来豊かな音楽家たちが高い水準で競いあった。第1部門1位に選ばれたのは、5年前にイギリスで結成されたベルチャ・カルテット。2次予選最大の関門だったベルク「抒情組曲」、本選で"最高峰への挑戦"として課されたベートーベン「大フーガ」を見事にまとめ上げ、岩淵龍太郎審査委員長に「世界の超一流に比肩」と言わしめるなど、全審査委員を喜ばせた。

 

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第2部門では、イスラエルのエルサレム・トリオ(ピアノ三重奏)が1位となった。一人一人の高度な技術と知性あふれる構成力に加えて、豊かな歌ごころで深い感動を与えた。

あらゆるジャンルに門戸を開き、聴衆による審査が行われたフェスタのメニューヒン金賞は、イギリスの4人組打楽器グループ、バックビートに贈られた。オーケストラとの共演、ソロ・アルバム録音など経験豊富なメンバーがパフォーマンスも取り入れて聴衆に訴えた。

岩淵氏は「出場者が最高水準の演奏をした一方で、コンクールの象徴である第1部門への応募が減った。4人で常に緊密に練習し合う演奏形態を保ちながら、生計を立てるのが困難になっているのかも知れない。フェスタでは民族音楽やセミポピュラーがふるわず、クラシック的なものへと聴衆の評価が集約した」と話していた。

 

うたごえ新聞 6月14日 日下部吉彦(音楽評論家)

フェスタは、地球上に存在するオトの出るものなら何でもよい。室内楽の範囲を超えないものであれば、どんなアンサンブルでも参加できるというユニークな部門。このフェスタが、今回は、大いに注目を集めた。もともと、フェスタ部門の提唱者はあの世界的ヴァイオリニストで、去る3月、惜しくもこの世を去ったイエフディ・メニューヒン。しかも、この部門の審査は、すべて一般聴衆によるもの、と規定したのもメニューヒンであった。そして今回、メニューヒンの名を永久に顕彰するためフェスタ部門の金賞を"メニューヒン金賞"と呼ぶことにした。

 

 

 

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