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それは過去において起きたことですが、どうやら、今もそういう時期にさしかかってきているようだ。山本さんは、「そういう危険があるんだ」とおっしゃったわけです。とくに、「アメリカの若者がまた5万単位で死にますよ。でも、われわれアジアのほうは何百万人単位で死ぬんですから、たまったもんじゃない」ということをおっしゃったわけです。

 

20:台湾問題がアジア中にアメリカ不信が広がるドミノとなる可能性

 

それからもうひとつ、山本さんが、台湾についておっしゃったことがありまして、これも今回アメリカ側が非常に注目してノートをとっていましたが、「アメリカが台湾を見捨てるようなことがあったら、これはドミノ式に、まず韓国あたりがアメリカに対して疑問を持つだろう。そして、アジア中が『アメリカの軍事的な庇護』を信じられなくなって、次々に考えが変わってきますよ。だから、台湾というのは台湾だけの問題ではなくて、アジア中の、日本も含めてドミノになる可能性がある」というご指摘でしたね。

山本 わたしは、「アジア諸国は、何千年にもわたり中国大陸のランドパワーの影響力を受けてきたという事実がある。いまでも影響力は潜在的にあって、われわれ日本人とかアメリカ人の中国観とは違う中国観がアジアにはあるということは忘れてはいけません」ということを言いたかったわけです。

 

21:APCSSは日米関係を深めアジアに広げていく絶好の場

 

小川 APCSSで教育にあったっているアメリカのスタッフは、そこまで深くは考えていないように思われましたね。だからこそ、いま山本さんがおっしゃられたような発想を日本からの参加者が、注入すべきだと思うのです。日本も意見を言うし、アメリカと日本が丁々発止でやっていく。時にはアジアの声を日本が汲み取って代表する。こうして、アジアと日本とアメリカが、いろいろなことを話せるようになる。日米関係を深め、アジアに広げていくには、APCSSは絶好の場所であると思うんです。

日本からは、海上自衛隊がAPCSSの13週間のプログラムに学生を派遣しているとのことですが、年に3回人を送れば、ずいぶん実りある交流となるでしょう。

もちろん学ぶことも多いですけれども、日本の立場をそこで説明し、アメリカと日本でいろいろなことを話し合うことも大事です。

29ヶ国が集まっているといってもアメリカの影響力は圧倒的で巨大です。アジア・パシフィックの小さな島国からも、参加者が集まっているとは言え、29ヶ国の外交政策、国防政策と、アメリカの政策を対等に論じるなんていうのはナンセンスなんですね。

それから、どうしてもアジアの人たちには、アメリカの言うことを聞きたくないという感情があります。それも事実として認めて、さてどうするかです。そこは日本がアメリカの真意を汲み取り、仲介、通訳をする必要があるでしょう。そういう意味で、APCSSでは、日本がアメリカとアジアを結ぶブリッジになることができる。

 

 

 

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