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13:第7艦隊がSEAPOLのマニラ会議に代表を送った経緯

 

加藤 アメリカの参加者はいたんですか。

川村 海軍の弁護士が参加しました。今回、この会議が始まる前にいろいろ岡崎研究所は動いたわけです。というのは従来、大内先生なども参加されたSEAPOLの会議には、海洋の利用者であるアメリカ海軍が一回も参加していなかった。アメリカの専門家はみえていたそうですが、学者であって海軍の参加者ではなかった。

私どもは、この「公海の自由航行」プロジェクトで、昨年(1998年2月)に、加藤(周二)さんたちとハワイへ研究調査に行かせていただきました。そのさい、太平洋艦隊司令部(CINCPACFLT)を訪問して、司令官はじめ幕僚に「アメリカ海軍にとって何が問題なのか」をいろいろ聞いたわけです。その中でまず彼等が最初に言ったのは「インドネシアとかフィリピンが主張している群島水域理論が問題である。米海軍の行動が制約を受ける可能性があるからだ」ということでした。これは安全保障の面から見ても、将来大きな問題になる可能性があるという話を聞いていました。とくに太平洋艦隊司令部の弁護士(海軍軍人)が、とても理解しやすいプレゼンテーションをわれわれのためにしてくれました。

そして今年(1999年)春、このマニラでの会議を計画していることを、SEAPOLのフランシス・ライ博士から相談をうけたときに、「これは、海洋の使用者であるアメリカ海軍を入れなければ、会議の意味が半分失われるのではないか」と言いました。このことを、主催者であるSEAPOLに言うと同時に、太平洋艦隊司令部にも、「この会議には是非参加すべきである」と助言しました。そして、ハワイからは来ませんでしたが、実際の使用者である第七艦隊の代表が横須賀から来て、アメリカ海軍の立場を詳しく説明しました。クロフォードというとても立派な黒人の国際法学者ですね。だからアメリカ海軍がマニラでの会議に参加して、使用者としての立場からいろいろな要望事項を直接沿岸諸国にも説明し、わかってもらうように努力したということは、大変な進歩だったのです。これは、事前にわれわれの根回しが成功したということで、この会議が参加者にも意味あるものとなったわけです。

小川 それも全部、どこに出発点があったかというと、いま、川村さんからご紹介がありました1998年2月のハワイ調査、そして、1998年12月にフランシス・ライ博士をわれわれの「公海の自由航行」プロジェクトで、日本にお招きしたところにあるんです。このときは、ライ博士だけではなくて四人の方をアジア各国からお呼びしました。

川村 マレーシア海事研究所のハムザ所長、韓国のSeohang Lee(李瑞恒)博士などですね。

小川 そういう人たちに、この部屋にお越しいただいて、まる一日お話をうかがったり意見交換しました。それがきっかけになりました。

 

14:カナダのSEAPOLに対する援助額

 

日本財団 SEAPOLは先ほどカナダからいくらもらっていたと言われましたか。

大内 2000万ドルを二回出しています。カナダドルかも知れませんが、ドルです。

川村 数字は詳しく記録していたと思いますので、あとで調べてみます。2000万ドルというのは、ちょっと多いような気がしますが。

〔事務局注:10年間で2000万カナダドルとすると、1年につき200万カナダドル=1億6000万円になる。バンコクの事務所経費・人件費、アジア諸国での年間5〜6回の国際会議の運営、各国からの発表者の招聘旅費、出版物を考えると、説明のつく金額と思われる。ただし、この予算で、東京、ソウル、ハワイなどで国際会議を開催することは困難をともなうだろう〕

 

 

 

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