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加藤 いいか悪いかという問題もあると思いますが、テレビで見ていたら、組み替えではないということを〈…聞き取れず…〉。

唯是 そういうことがいいか悪いかという問題ではなくて、趨勢としてそういうことがある。ただ問題なのは、例えばこの野菜は無農薬だというふうにいっている。だけど、それは、まわりが農薬をまいているから、できるのです。実際に農業をやっている人はみんな言うけれど、農薬なしではいまの品種はまず駄目だということです。だけど、周りが農薬を撒いているときに、自分の所だけ無農薬であることはできる。日本全体が無農薬になったら、それは病害虫が発生して、雑草が生えて、全滅するわけでしょう。だから、程度の問題ですね。今まで使い過ぎているからそれをセーブするという効果はあるけれど、完全にそれをなくすということは今の技術では無理です。

加藤 なぜそういうことを正面から言わないんですか。

 

21:いまの消費者運動は非常な贅沢を前提としている

 

唯是 僕などは言っているんですが、消費者運動というのは反発が怖くて多くの人は言わないですね。専門家は言わない。会うとみんなブツブツ文句を言っているんです。それは政府の態度にもあるんです。そういうものは駄目だったら駄目でやめてしまえばいいんです。そんなもの毒だからと言えばいい。だからはっきりと実験データでも何でも公表して、ここまでわかっている、それでなおかつ嫌だったら食べない、とすればいいわけです。ただ、今みたいな無農薬運動が日本全体に広がったら、あるいは世界全体に広がったら、農作物は全滅しちゃうわけです。

だから、ある意味ではいまの環境問題は非常な贅沢をやっているわけですね。有機農業というけれど、昔の有機農業ではまったく農薬を使わなかったかというと、使っているわけです。それから寄生虫もいっぱいいたわけでしょう。そういうものを排除してここまで来たわけですが、これを否定したら、また昔に戻ってしまうわけです。もっとも、寄生虫がいたからアトピーにならないという意見もあって、体に寄生虫を飼っている人もいますね。寄生虫は350万年前に人間が発生した、そのときから一緒にいるんだからというわけです。それにはとてもバイオテクノロジーもかなわない。

加藤 「非武装中立」という議論と似ているような気がしますね。1

 

1 この発言は孤立しているので事務局として注釈を加えると:「非武装中立」論は「核の傘」の下の平和論であり、「核の傘があるから...」を無言の前提としていた。アメリカの核の傘があるならば、日本は非武装中立でもやっていけるという考えかたである。「核の傘」が本当にあるのかどうか疑わしくなってくると「非武装中立」論は色あせてしまった。(事務局)

 

 

 

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