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3) 観光振興の課題

 

■魅力ある観光地づくり

観光需要が多様化、個性化する中で、観光地づくり当たっては、従来以上に「地域らしさ」や個性を大切にすることが求められている。今日、観光客からも止められている旅行は、新しい発見のあるたびといってもよいと考えられる。他の人と違う体験を通じて、充足感を味わえることが重視されていると考えられる。

この点、わが国の観光地では、多様化・個性化する観光需要に対して、まだ十分な対応が行われていない可能性がある。近年、観光への参加率や延べ観光客数は、漸増しているものの、国内旅行は頭打ちとなっている。これは、一時的な不景気の影響による消費の低迷の結果ばかりではなく、むしろ国内旅行が消費者のニーズに合っていないことを示唆している。国内旅行の伸び悩みと裏腹に海外旅行は、97年度には円安の影響などで若干の頭打ちとなったものの、97年度まで5年連続で過去最高の旅行者数を記録している。直近の円安傾向の中でも海外旅行者が堅調に推移していることは、海外旅行が国内の旅行に比べて消費者のニーズに応えた観光商品を提供していることを示していると考えられる。

海外旅行と国内旅行の質的な差異を踏まえた上で、ひとつひとつの地域の資質を発掘し、観光客に訴求力のある観光地としての魅力、観光商品としての魅力を創出する必要がある。

 

■観光地の持続可能性の確保

観光の多様化、個性化が浸透する中で伸びているSITが対象とする観光資源の中には、貴重な動植物、歴史的資源も多い。こうした資源は、きちんとした管理のもとに活用しないと、遺跡・文化財などの場合は劣化を招く可能性がある。また、動植物の場合には、群落が滅亡する可能性もある。したがって、観光資源としての利用に当たっては、資源の保全との調和を図ることが不可欠である。

また、近年、観光地づくりと地元のコミュニティの間で対立が生じているケースが散見される。観光地化が進展した地域では、自動車交通の増大に伴う渋滞や排気ガスの臭気、騒音、ごみの増大などの問題が生じており、このことが観光客と地元住民との対立を招いている例も生じている。

長期的に発展を続けることのできる観光地整備に向けて、このような対立を解消していくことが必要である。

 

 

 

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