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さてこの黒潮の海面での流速は、毎秒1m〜2.5m位で、海流としては速いほうですが、深くなるにつれ流速は遅れて、深さが1000m位までは同じ方向に流れています。そこでこの黒潮に乗って、人や魚や昆虫や植物が日本列島へ辿り着いたという歴史があるわけです。現代でも、黒潮という海の道路はよく利用され役立っています。さて黒潮にも季節変化があって、夏期に最も速く流れ、秋に急減して冬から春にかけ徐々に速くなり、4月ころに少し急加速してから夏に最高速になることを繰り返すようです。さらに黒潮の特別な性質として、大蛇行と非大蛇行を繰り返すことで、最近の観測技術の進歩によってその実体が判ってきました。その概要を[第二図]に示します。図の中で? の直進型と? ? の蛇行型が観測されます。

 

[第二図] 黒潮の大蛇行

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これまでは直進型が普通で、蛇行型が異常だと考えられていましたが、新しい観測の結果は、そうではなく一回の蛇行継続期間は五〜六年間あり、そんな蛇行が五十三年間に四回起きています。また図に示したように黒潮がH(八丈島)の北側を流れる時と南側を流れる場合とがあって、なかなか複雑です。しかし、八丈島の水位を測っていれば、黒潮が八丈島のどちら側を通っているか、たやすく判断できます。八丈島の水位が高い時は黒潮は北側を通り、低い時は南側を流れています。この潮位の高低差は一米以上もあるのです。このことは他の海流にも応用出来るので、世界中の海面の高さを正確にうまく測定できたら、世界中の海流の様子が素早く判るわけです。そして観測衛星に搭載された海面高度計よって、それが可能になりましたので、黒潮の蛇行の変化の様子も速く判るようになってきました。

こうして世界中の潮流を調べてみると、特に黒潮だけが直進路と蛇行路を繰り返しながら流れているのは何故か?ということが現在研究者の注目になっており、まだ完全には解明はされていません。

さて黒潮に対して、北の千島列島から流れてくるのが親潮(千島海流)です。この親潮は、カムチャッカ半島の東側を流れるカムチャッカ海流と、オホーツク海から千島列島を通って太平洋に出た海水とが合流したものとされています。親潮の色は緑がかっており、沢山の植物プランクトンを含んでいます。とくにブルーミングという植物プランクトンが大発生する五月には、緑っぽさが濃くなります。これらの植物プランクトンが繁殖すると、それを動物プランクトンが食べて増殖し、それを餌にして稚魚が育つので、豊かな水産の親として親潮の名で呼ばれてきたわけです。

親潮は千島列島→北海道東部→三陸沖へと進みますが、三陸沖に達するころに黒潮系の? 津軽暖流や? 宗谷暖流等と混じり合いながら混乱状態の場が出現しております。そして更に北上してきた黒潮本流と衝突する場所は、その年によって大きく変動します。親潮が異常に南までやってくるのは、冬から晩春にかけて起り漁業を大混乱させますが、この現象は、北太平洋全体に関わる大きなスケールでの、大気大循環に原因するといわれます。

 

 

 

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