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おわりに

 

平成8年度からロケット式「新津波警報伝達装置」の実用化に向けた開発を行うとともに、その実用化と普及を図るために、新津波警報伝達システムの調査研究とその普及事業を行ってきた。伝達装置については本事業の普及事業実施委員会や公開実験に参加した防災関係者等の意見を基に、(財)シップ・アンド・オーシャン財団と火工品会社が伝達装置の改良・改善を行うとともに、警報信号としての信頼性の向上に努め、商品として完成させた。

他方、財団法人日本海洋レジャー安全・振興協会では平成8年度に「打上式津波警報伝達システムに関する調査研究」を行い、当会ではこの成果を基に「新津波警報伝達システムの普及」事業を、平成9年度に2地区(宮古市と沼津市)、続いて平成11年度に2地区(日南市と釧路市)で実施した。

地震が多く、過去に幾多の津波被害を受けたわが国では津波防災に極めて関心が高く、平成9年度を含め各地区の公開実験で報道関係者の注目を集め、多くの新聞やテレビで公開実験の様子や本システム全般について、関係者のインタビューを交えて詳しく報道された。

また、参加した国や県・道、市町村の防災関係者、海洋レジャーや漁業者等関係機関・団体からは、従来の津波警報の空白域に居る人達に、迅速かつ確実に伝達する手段がない現状から、この標識信号が市民に広く認識されれば有効となる、アテンション・コールとして有効である、との積極的な評価が寄せられた。

本システムは信号弾を高さ250mに打上げ、半径4kmの範囲に津波警報発令を伝達できるため・海岸や沖合に居る人達だけでなく、陸上に居るテレビやラジオを持たない人達にも注意を喚起することができる。余暇を楽しむ時代を迎えてヨットやサーフィン、海水浴、磯釣りなど海洋レジャー人口は年々増加し、沿岸漁業や港湾工事の従事者も多い。この人達の人命を津波災害から守るシステムの整備の必要性が今後増大してくるであろう。

簡易な発音・発煙信号弾の打上げによって、いち早く、かつ同時に広範囲の人達に津波襲来の危険性を伝えられることが本システムの大きな特長であり、本事業は各方面から高く評価されるとともに、自治体等への広報・普及活動が重要であるとの指摘を受けた。新津波警報伝達システムの普及という本事業の所期の目的は達成されたと考える。

今後は、津波襲来の想定される沿岸自治体、防災関係団体・機関、海洋レジャーや漁業者等の海事関係者、さらには報道関係者などマスメディアに対して本システムの広報活動に努め、広く普及を図っていきたいと考えている。

 

 

 

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