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(2) 廃油ボールによる海洋汚染の問題

(1)で述べた海洋汚染の発生確認件数は、海洋に排出された油や廃棄物などによる海洋汚染の現象を事案としてとらえたものであるが、油による潜在的な汚染状態を示すものとして廃油ボールによる汚染がある。この廃油ボールと称されるものは、主として油タンカーから排出されるダーティーバラスト中の油分が凝固することにより生成されるものといわれており、その性状は、固形状もしくはタール状の油塊である。

我が国においては、昭和40年代前半から、廃油ボールの沿岸への漂着による環境汚染が社会的に注目をあびるようになり、その後の産業、経済の急速な発展に伴う原油輸送量の増加とともに廃油ボールの漂流、漂着も増加し、漁場、海岸、海水浴場などに大規模な油汚染を引き起こす等海洋環境に重大な影響を与えるようになった。

この廃油ボールによる海洋汚染は、単に我が国だけの問題ではなく、産油国の周辺海域を中心とした世界的な問題となっている。

この廃油ボールなど油汚染問題を解決するため、IMO(国際海事機関)を中心にダーティーバラストの排出を国際的に規制する条約の策定が進められ、1978年(昭和53年)に採択されたMARPOL73/78条約にこれらの規制が盛り込まれた。

一方、海洋汚染モニタリングプロジェクトを進めていたIOC(政府間海洋学委員会)によって、昭和55年、廃油ボールの国際的に統一された観測手法が確立された。

海上保安庁では、我が国において問題となった昭和46年から、我が国独自の観測手法により、周辺海域における廃油ボールの漂流、漂着状況の実態調査を開始しIOCによる国際的な観測手法が確立した後は、この手法に則り、継続的に調査を実施している。

平成10年の調査結果によれば、ひところのひどい汚染状況はみられないものの、前年と比較して、漂流、漂着とも増加の傾向を示している。このことから、条約等により国際的な規制が行われ、その効果は認められるものの、一方では、依然として、ダーティーバラストを不法に排出しているタンカーの存在も否定できないものと考えられる。

 

 

 

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