5.2.4 出発抑止機能を活用した等時隔制御による効果
鉄道事業者によっては、加減速性能の異なる車両を導入しても、性能が低い車両に全体の運行が抑えられ、結局、ダンゴ運転を増長する結果となることを恐れ、むしろ、列車の「等時隔運転」の必要性を力説し、ダンゴ運転の解消を第一の目的とする場合が多い。
このダンゴ運転の解消には、出発抑止機能を活用した「等時隔制御」により、LRVの高性能化を一層効果があるものにすることが可能である。
この機能は、LRV車両が指定の停留所に到着し、高速信号の許可をセンタに要求した時、センタ側で先行列車との運転時隔を計算し、指定の運転時隔以下の場合、「出発抑止」を出力し、LRV車両を該当停留所に停車させ、運転時隔の調整をはかる。所定の時間が経過し、運転時隔が空いた時に、出発抑止を解除し、かつ先行列車との距離的な間隔が所定以上に空いている場合、「高速信号」を出力するもので、これを「等時隔制御」機能と呼んでいる。
この等時隔制御機能をシミュレータにプログラム化し、シミュレーションした結果の1例を図-5.2.3に示す。
図-5.2.3において3番目の列車がLRVで、C停留所で 「等時偏制御」を受け(図における▽印の地点)、その後に回復運転をはかり、ダンゴ運転の解消に寄与していることが示されている。
5.2.5 運行管理面からの評価のまとめ
鉄道事業者の立場として運行管理面から「LRT高速運転用信号システム」を評価した結果をまとめると、以下に示すことが明らかになった。
(1) LRVを高速化する場合、目視運転が基本となるので、現行の路面電車のブレーキ距離と少なくとも同一のブレーキ距離で停車できる減速度を確保する必要がある。
(2) LRVの最高速度を60km/hとした場合、必要な減速度は0.2Gとなり、シミュレーションに際しては高速化だけでなく、高加減速化も合わせて実施することとした。
(3) 平常時シミュレーションを実施した結果、LRVは6停留所間で在来車より80秒(18.2%)の到達時分の短縮化が達成され、LRT高速運転用信号システム実用日の速達性向上の効果が確認された。
(4) LRVの速達性向上により車両運用の効率化が達成され、LRT高速運転用信号システム実用時の運行ダイヤ編成時の効果が確認された。
(5) LRVに対する出発抑止機能を活用した等時隔制御機能により、ダイヤ乱れ時のシミュレーションを実施した結果、ダンゴ運転の解消に効果があることを確認した。