(4) 粒径分布による分散性能
分散性能試験において、かく拌後に静置した容器の中では、クリーミング、凝集、合一といった現象が起こっている。これは、分散剤の性能の善し悪しによって油分の粒径に大小が生じるためである。
このため、S-7の粒径分布をMDPC法の試験油であるC重油により調査した。
一方、平成6年度「油処理剤の性能の再評価に関する調査研究」の結果では、粒径が30μm以下であれば、粒子の浮上速度が遅く、水中での粒子の凝集や合一の少ない安定したエマルジョンが得られることが判明している。また、平成10年度のMDPC法に関する静置時間の調査において、静置時間の増加に伴って分散率が低下し、静置時間か20分〜25分を経過するあたりから、分散率の変化が少なく、ほぼ一定の値となり、静置時間が10分を経過するあたりからは、静置時間の増加に伴う分散率の変化は、ほぼ一定の割合で低下したことから、静置開始後10分が経過すれば、粒子はほぼ均一に分散した状態になっていると考えられ、海外の他の試験法での静置時間をも参考として、静置時間を10分とした。
これらを踏まえ、粒径分布調査は、かく拌静置後5分及び10分の2ケースについて調査することとした。
1) 試験条件等
1] MDPC法(静置時間を除く)
2] 分散剤 S-7
3] 静置時間 5分間、10分間
4] 混合液
混合液は、静置後、分液ロートの下部からそれそれ100mlを採取した。
5] 測定機器
レーザー回折粒度分布測定装置
2) 試験結果と考察
試験結果を表3-2-11〜表3-2-12及び図3-2-11〜図3-2-13に示す。
静置5分後と静置10分後の粒径の範囲、平均粒径、最大分布の粒径及び30μmまでの累計を纏めた表3-2-8が示すとおり、最大分布の粒径は10分後に若干増加(粒径2μm、分布率1.4%)したものの、粒径の範囲は42%と大幅に減少し、平均粒径も0.53μm減少していることから、粒径が大きいほど浮上速度が速いことを示した。また、10分後に約97%の粒径が30μmまでの範囲にあることは、粒径の大きな粒子が浮上して、分散層が、ほぼ安定した状態の粒子で構成されていることを示し、S-7の分散性能は粒径分布からも良好であることが分かり、MDPC法の静置時間10分をさらに裏付けるものとなった。