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流速が速くなると一次フェンスのスカート下部が図に示すように喫水が浅くなり前項で述べた現象により漏油する。漏れた油は、一次フェンス後方の水の乱れ(死水域)により一次フェンスと二次フェンスの間に浮上し滞油する。浮上した油は死水域の逆流によって一次フェンス後面に輸送され大部分が滞油する。一次フェンス後面の滞留した油は波浪に乱されにくく、また一次フェンス浮体部によって風による影響が少なく油層は安定する。流速が速くなると油滴の浮上速度より主流で運ばれる速度が速いため二次フェンスの下部を通過し漏油する。このことは二重展張といえど完全に滞油することができず限界滞油速度を有していることとなる。

本展張方法は使用するオイルフェンスのスカート深さにより一次〜二次フェンスの距離が異なること、また、スカート深さが深い程限界漏油速度が高速側に移行し単独展張より滞油性能の効果が高いことが挙げられる。

 

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図1-3-17 二重展張オイルフェンスの滞油のメカニズム(B型オイルフェンス)

 

5 オイルフェンスの滞油性能

我が国で市販されているオイルフェンスは、3.(1)項で述べた5分類である。このうちオイルフェンスの規格が定められているのは、オイルフェンスA及びオイルフェンスBで、寸法、引張り強さ、耐油性及び耐水性等の構造、材質等に関する「製品規格」で、滞油性能に関しては触れていない。

一方、オイルフェンスC及びオイルフェンスDは、昭和50年度、運輸省船舶局内に設置された「海洋油濁防止装置開発委員会」により設定された外洋向けオイルフェンスで、それぞれ滞油性能及び耐用限界により「性能規格」に分類され、寸法等の製品規格については規定されていない。

このような状況から(社)日本造船研究協会では、第10基準研究部会(当時、東京大学、元良誠三委員長)を設けて「海洋油濁防止装置の性能評価基準に関する調査研究5)6)」に着手した。

この調査研究の中で各型オイルフェンスの滞油性能を明らかにすべく現シップ・アンド・オーシャン財団筑波研究所の回流水槽(計測水路60m、幅3.8m、水深4.3m、最大流速1.5m/s、最大波長・波高、10m・0.6m、最大風速20m/s)において実施することとして表1-3-2に示す試験条件を設定した。

 

 

 

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