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4 漏油のメカニズム

海洋油濁防止研究所(現シップ・アンド・オーシャン財団筑波研究所)においては、各種油回収装置、油回収船の性能試験と併行して、オイルフェンスに関する基礎実験や各種タイプのオイルフェンスの滞油性能試験を実施してきた。この滞油性能試験時に観測されるオイルフェンスからの漏油状況等の主要な段階を図解的に表したものが図1-3-154)である。

なお、オイルフェンスは直立平板型で水槽内に固定した状態である。

 

図1-3-15 直立平板型オイルフェンスの油流出のメカニズム

ステップ1

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ステップ1; 流れに乗ってオイルフェンスに到来する油層を表している。

流速が遅い時は、油層厚さは比較的薄く、油層と水面との間も穏やかで、油層と水面との間に発生する界面波はほとんどないか、または油層の前端付近に弱く発生する。

 

ステップ2

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ステップ2; 流れがやや速くなった状態で、油層はかなり厚くなり、特にフェンス前面近くで厚くなる。先頭波もやや大きくなり、界面波が粗くなってくる。

 

ステップ3

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ステップ3; さらに流れが速くなった状態で、油層はさらに厚くなり、界面波も大きくなる。

特にフェンス方面の界面波が大きくなり、水中下方に引込まれたような形となる。

油層の上面にも界面波の影響による波長の短い波ができる。

 

ステップ4

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ステップ4; もっと流速が上昇した状態で図示のフェンス方面の渦のために、フェンス方面の界面波は一層大きくなり、その下端から小さな油滴がちぎり始める。また、この渦が大きくなると、油層はフェンス方面から押し返されて、フェンス直前に油層の存在しない開水面が発生する。

先頭波もその中に発生している図示の回転のために大きくなり、その下方から小さな油滴が生じる。流速がそれ程高くならない間は、先頭波からちぎれた油滴は、前浮上して油層に入っていく。フェンス方面の界面波から発生した油滴は、渦に輸送されて、回転して、フェンス下部から漏れることはない。

しかし、直立平板型の場合、流速が0.7〜0.8ノット位になると、フェンス前面の界面波から発生した油滴の一部は、渦の回転運動から離脱して、主流に乗って、フェンス下方から後方へ流出していく。さらに流速が上ると、先頭波からの油滴も、主流に乗って、フェンス後方へ流出する。

 

 

 

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