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少数のスタッフ、限られた医療資源を活用し、救命可能な患者をまず選定し治療する。被災者の数が多いほど短時間のうちに判定することが重要である。

また、トリアージに関しては、全国共通のトリアージタッグを使用し被災者の識別を行うことが望ましい。この統一に関しては昭和63年日本医師会が統一見解を出しているのでその方向性に従うのが最善と考えている。タッグは治療優先度の順から赤、黄、緑、黒が用いられている。

しかし、実際には治療の優先度を客観的に決めることは困難である。これまでもいくつかのスコア化が提唱されてきているが一長一短で、混乱した災害現場での有用性が低い。顔や手足から出血している被災者は重症感がある。ところがより重症度の高い患者は身体の表面は打撲痕程度の鈍的外傷でも、内臓破裂や骨盤骨折を起こしている場合がある。また優先的に医療の手を差し延べるべき被災弱者として、子供(children)、女性(women)、老人(agedpeople)、そして病人・障害者(patients)がある。これらを英語の頭文字でCWAPという。こうしたことを地域住民、救助隊、医療関係者に教育啓蒙していくことも重要である。

 

3) 現場でのトリアージに続く応急処置と後方搬送

阪神・淡路大震災では、情報途絶と交通渋滞による後方搬送の問題が教訓とされた。緊急自動車にも優先順位をつけるべきである。救命と消化が最もプライオリティーが高いからである。今回の災害では救急車による広域搬送が交通渋滞で途絶され、何人の重症者が命を落としたことだろうか。救急搬送では、陸路だけでなく、空と海の利用を考えるべきであろう。空路の場合、県や市から要請主義やヘリポートの問題はあったが、約200名の患者の搬送に利用された。将来的には、救急災害ヘリコプターの全国配備を考える必要がある。ドイツでは、半径50キロの地域ごとに、ヘリの出動体制が整備されており、発災後15分以内に現場に到着することになっている。海からの救命の場合、海上保安庁や海上自衛隊の船舶のみでなく、フェリーボート等の客船の利用も考えられている。

 

 

 

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