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災害に備える医療のあり方について

 

日本医科大学救急医学

小井土雄一

 

H7年1月17日早期に発生した阪神・淡路大地震は6,300名の尊い命と3万5千人にものぼる負傷者を出し、戦後最大の大災害となった。この大地震を契機として我が国では、大災害における災害医療のあり方についての再検討が活発に行われるようになってきた。数多くの尊い命を無駄にしないためにもより良い災害医療システム構築と国民の理解・協力が急務と考えている。ここではまず災害時における救急医療の重要性について考え、将来の展望についてもそれぞれの項で説明してみたい。

 

1) 初期初動期の緊急対応とはなにか

災害医療における初動活動を国際的にSRMとよくいう。Sは捜査(Search)、Rは救助(Rescue)、Mは医療(Medical assist)である。瓦礫の下にいる負傷者を助け出す技術は、特殊技術を持つ救助チームの担当である。それ以前の生存者の捜査では、我が国は、より効果的な生存者の発見機器の開発を急がなければならない。救助段階では1分遅れると死者一人が増え、1分早ければ1人多く助かると言われている。欧米では、この災害現場から救急医療が開始される。捜査チームにより瓦礫の下の生存者を発見し、救助チームがその負傷者を救出する。その時に医師たち(米国ではRescue Doctorと呼ばれている)が救出前に点滴を開始して脱水に対する治療を行う。時には、2〜6時間以上たった虚血肢は、救出前に駄血帯を挟まれている部位の中枢側に装着することもある。時には、on site surgeryと称して現場で四肢の切断術を行うこともある。このSRMに関しては我が国ではまだ空白と言っても過言ではない。

 

2) 災害現場のトリアージはどうしたら可能か

災害現場では、経験豊富な医師や救急救命士・救急隊員等がトリアージドクターとなり緊急度と重症度の両面から治療の優先度を決定してゆく。この際1人の命を救うために十人の命を失ってはならないのが災害医療の特殊性である。

トリアージとは、限られた人的・物資資源の状況下で、最大多数の傷病者の最善の医療を施すため、患者の緊急度と重症度により治療優先度を決めることである。治療不要の軽傷者はもちろん、搬送さえ不可能で救命の見込みのない超重症患者には優先権を与えない。

 

 

 

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