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アーティストは自分が一番新しいと思っているのですが、実際はほとんどそうじゃありません。ほとんどは石ころです。その中にわずかな宝石が隠れている。僕なんかの仕事はそれを探し出そうということですから、めったにぶち当たらない。一生ぶち当たらない可能性もある。それくらいめったにない。

E ちょっと自己紹介をさせていただきますと、芸団協の芸能文化情報センターというところで、舞台芸術関係のいろいろな基礎データをつくったりとか、さまざまな角度から研究を進めているという仕事を担当しております。なぜこういう調査研究というのが実演家の集まりである団体にできてきたかというと、実演家が自分たちの仕事をいかによくしていくかという話を進めていく中で、じゃあ、自分たちでできることというのを、それを支えてもらういろいろな世の中の仕組みであるとか、その周辺の事情がわからないと、外へ働きかけもできませんし、自分たちが置かれている立場が社会の中でどういう位置にあるのかというのを客観的に知る必要があるということで発展してきた調査事業なんです。ここで「芸能白書」というのをつくっていまして、日本のパフォーミングアーツに関するいろいろなデータを集めるという作業をしてきたわけですが、それをやってちょっと愕然としたのが、何で今まで基礎データというのがなかったのかなということなんです。

先ほど市村さんが最後に文化政策でどうしても欠けている点というのの二つ目で、芸術専門の研究機関がないとおっしゃったんですが、それはどういうものを具体的に考えていらっしゃるのかなというのを知りたいです。それはなぜかというと、先ほど文化政策を今どうやってつくっていくかという話があって、それはつくるに当たっては、それをつくるための基礎データであるとか、何か根拠になる理論づくりとか、そういったものはどこでつくられるのかというのが、疑問としてあります。

市村 それは学校ですが、幾つかの考えがあります。例えば、俳優の学校をどうつくるか。今までは国立大学に、あるいは芸大でも何でもいいですけど、そこに演劇学校を入れようじゃないかという動きがなかったわけではないのですが、それはやはりだめだと思います。そんなことをする必要はない。大学の中でやってもだめじゃないかなと思っています。やはりNPOでつくるしかないんですよね。残念なことに、大学というところに限界を相当感じていまして、大学は本当に社会と切り結ばないところだというのは、常々わかっている。そこでやっても無関係なものができてくるんじゃないか。やはり現場の人間とかなり哲学的な人間とシステム的な人間を寄せ集めて、東京財団でやってくれれば一番いいのですが、ただ資金的なバックが必要です。

 

 

 

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