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第5部 ブレア労働党政権による「公共サービスの現代化」プログラム

 

労働党政権が誕生して以来、高齢者福祉をめぐって新しい動きが活発になってきている。その理由として、保守党政権による18年間のハードな民営化路線に替り、よりソフトな政策をとると期待される労働党政権が誕生したこと、もう一つは高齢化が進んで高齢者層のもつ政治力と消費者能力が改めて理解され、また戦後世代が高齢者の仲間入りを目前として、自分たちの高齢時代の福祉イメージをより強く主張するようになったことがあげられる。そして、現在の新しい動きの矛先は、望ましい高齢社会のあり方を探る「戦略論」と、高齢者サービスの内容と質、および効率性の向上をめざす「サービス論」の2つに向けられている。

 

1) 「公共サービス現代化」の基本的視点と原則

ブレア政権が進める現代化プログラムは、すべての公共サービスを根本的に見直し、21世紀の市民社会に相応しい福祉および公共サービスのあり方を追及しようとするもので、社会保障(とくに年金)、国民医療サービス(NHS)、対人社会サービス、地方自治体の運営など、公共サービスのすべてを改革の対象としている。いわば、広い意味での社会保障体系の全体を見直そうとしているわけである。

現代化プログラムでの基本的な問題意識は、国家と個人の関係、および国と地方自治体の関係の問い直しである。とくにつぎの2点が重要とされている25)

※国民の福祉においてどこまでが個人の責任であり、どの部分からは国(自治体)の責任とすべきか

※国は等しい公共サービスを受ける個人の権利をどの部分まで保障し、どの部分からは地方自治体の裁量および地域民主主義に任せるべきか

また、現代的な公共サービスが備えるべき条件として、つぎの9つの原則が設定されている26)

※目ざすべきサービス目標を設定する

※すべてをオープンにし、すべての情報を提供する

※利用者とのコンサルテーションを行い、利用者を参加させる

※誰にもフェアに対応する

※問題が生じれば正しく直す

※資源を有効に活用する

※イノベーションと改善を推進する

※他のサービス提供団体と連携する

 

 

 

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