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表16 英国における高齢者ケアおよびサービスの枠組み

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出所:The Care of Frail Elderly People(1994),p9の表をもとに作成

 

3) 国民医療サービス

 

◆経費と財源

英国での医療サービスは保健省(Department of Health)による国営のサービスであり、医療面でのほとんどのサービスは無料で提供されている。英国(イングランドのみ)でのNHS経費は1998年度で約400億ポンド(約7兆円)、これはGDPの約7%に相当する。財源構成は75%が国庫負担、13%が国民保険料収入、12%が患者負担・その他である11)。医療サービスを「病院およびコミュニティ(訪問看護婦など)サービス」と「家族医療サービス(家庭医、歯科医、眼科医、薬局など)」に分けてみてみると、前者にかかる経費の42%、後者の28%が65歳以上の高齢者で占められている(1996年度)12)

国民医療サービスで提供されるサービスのうち、一般開業医(General Practitioner:GP)や訪問看護婦、病院での入院や薬代などはすべて無料である。歯科医での検査や治療は有料で費用の8割(最大£348まで)を支払う必要がある。ただし、所得補助を受けている場合には無料となる(夫が扶助を受けていれば妻の費用も無料となる)。1999年4月からは眼科検査が無料となり、診療所に行けない人でも自宅で検査が受けられるようになった。その他、補聴器やそのバッテリーも無料である。所得補助を受けている人には眼鏡について一定の助成があり、また病院への通院コストへの給付も用意されている13)

 

◆プライマリーケア

過去30年くらいの間に、医療ケアの焦点は病院でのケアからコミュニティでのケアに移されてきた。プライマリーケアには一般医の他、訪問看護婦、保健婦、作業・理学療法士、言語セラピスト、歯科医、眼科医、難聴エイド、薬局、足の手当て(Chiropody)といったサービスが含まれてくる。高齢者はまず自分で一般医を選択して登録し、その一般医の指導のもとに病院での治療や訪問看護婦、薬のサービスなどを受けることになる。全国で約3万人の一般医が営業している。最近では個人診療よりもグループ診療が増えてきており、患者との距離が遠くなった反面、サービス設備が向上するとともに、より多様な形での時間外診療や訪問診療への対応が可能になっている。

 

 

 

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