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場所は消防団の会所や林業センターなど地域にある公的な施設五か所を活用している。

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熊坂市長になってから市内の訪問入浴サービスチームは1日に5軒を回るように能率アップした。

 

宮古市に住む六五歳以上の高齢者は二〇〇〇年で一万一八七七人に達し、そのうち支援や介護が必要なお年寄りは一二七〇人になる。市は、これらの方々を支えるための介護保険事業にかかる年間費用を二五億九五一〇万円と試算した。これを基に市は六五歳以上のお年寄りが毎月支払う一号保険料分も勧案して上乗せ・横出しサービス平均三一一五円とはじいた。現在、先の介護保険見直しを踏まえて最終金額を調整中である。

介護サービスを手厚くしようとすれば、市町村独自の地方税ともいうべき一号保険料を四〇〇〇円でも五〇〇〇円でも、高くして財源を確保すればいいはずだ。だが、それはお年寄りの抵抗を招く。全国平均の三〇〇〇円に合わせたさじ加減は市の財政実態と住民感情のバランスを慎重に見極めた金額である。熊坂市長は県立病院の医師と開業医をこの町で一〇年も務め、「市民の半数は身体を診ている」という。厳しい診療所経営とリアルな患者心理をにらんできた経験を市政に活用して足掛け三年。「市の福祉水準は県内の中クラスには上がったはず」と自信ありげだ。

宮古に限らず市町村の台所は火の車だ。行・財政の無駄を徹底的に洗い出した上で福祉にも"経営原理"を貫徹する。これは介護保険があろうがなかろうが、すべての市町村が直ちになすべきことである。しかし、それが単なる弱者切り捨てであってはならない。市民も行政もコスト意識を持ちながら、新しい福祉のあり方を追求する。介護保険はその新たなスタートである。

 

 

 

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