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吉田さん自身もまた、重症心身障害児を持つ母親である。

「当時は、何の社会的支援もないころでしたから、自分がそういう子を授かっても、一体、どこに助けを求めていいかわからない。そんな時に、療育機関で出会ったお母さんたちと意気投合して、一緒に療育訓練活動をしていくことになったんです」

六畳一間のアパートからはじまったこの『でてこいサークル』は、それまで行き場がなくて困っていた障害児を持つ親たちの駆け込み寺的存在となり、口コミで参加者はどんどん増えていった。その後、東京都地域福祉財団より助成を受け、拠点を増やしていく中で、「外出させることすら困難。何とか家にケアに来てもらえないか」という要望が強くなり、それに応えるべく生まれたのが、住民参加型の生活支援介助団体『ハートぽっぽ』なのである。

「立ち上げる時には、"何を考えているんだ"と各方面から相当バッシングを受けましたね。知り合いやつてを頼って、看護婦さんなどのいわゆるプロの方にも一〇〇人以上、協力をお願いしましたが、全員に断られた上に、"やめろ"と説得されました。医療が完備されていても、重症心身レベルの人を受け入れる施設はいくつもない。それをこちらから出向いて、一対一で預かって、なおかつ介助までやろうなんていうのは自殺行為だと。住民参加型の在宅サービスでやれる内容ではないとも言われました」

確かに、重症心身障害児者の場合、一歩間違えれば、即、生命にかかわってくるだけに、ケアする側の負担もリスクも大きい。

 

 

 

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