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妻のジーンさんは若いころから糖尿病を病み、薬の服用のほか、三時間おきに糖を計り、必要なら注射を打たなければならない。アシステッド・リビングに入る前は、一日二時間、通いの看護婦を頼んでいた。しかし、看護婦が時間に遅れたり、ジーンさん自身が注射を忘れたりして、よく体調を崩した。

 

夜中に倒れて老夫婦二人暮らしの限界を悟って......

 

九十六年の冬、ジーンさんが倒れて意識不明に陥り、途方に暮れた夫のハリーさんが、夜中の二時にエステラさんに電話で助けを求めたことがあった。この出来事でエステラさんは、八八歳の夫婦二人だけで生活する限界を悟った。夫婦は翌年五月にアシステッド・リビングに入った。エステラさんは言う。「何が起こっても緊急ひもを引けば助けが来ます。老いた父が母の側でオロオロするという事態はこれで避けられます」

アシステッド・リビングを利用するのはどんな人たちだろうか。

 

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アシステッド・リビングのひとつ「アトリア」のパンフレット

 

全米に一一〇のチェーン施設を展開する「アトリア」の職員ケリーさんは「定年退職後、暖かいフロリダやアリゾナに引っ越したものの、高齢のため二人だけて暮らすのかむすかしくなったご夫妻。あるいは夫や妻と死別し、子供や孫が恋しくなったお年寄りたちが入ります」と説明する。

多少の介助があれば自立して生活できることが入居の条件で、八〇歳代の方が最も多い。世話をする立場の子供たちは、そのほとんどが五〇代か四〇代。働き盛りで休暇が取りにくいうえ、自分の子供も完全には独立していないという年代だ。

 

 

 

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