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全国から視察が殺到する「百人委員会」

 

午前一〇時三〇分、会議室では岡山県から視察に訪れた同県奥邑町社会福祉協議会の理事七人を前に山野良夫西伯町社会福祉協議会事務局長が説明をはじめた。この日、二組目の視察グループ対応である。

「西伯町は福祉先進地ではありません。せいぜい全国の中クラスです」。全国から殺到する視察団を一手にさばく山野事務局長は、こう切り出した。「誇れるのは情報公開です」と。

自治体の情報を公開すると他の自治体よりも劣っている点が白日にさらされ住民に突き上げられるとあって、どこの県も市町村も行政情報をひた隠しにしてきた。ところが情報公開と住民参加を柱とする介護保険が実施されると「一山越えた隣町の介護サービスも丸見えになってしまう。その逆もある。うちの町長は、そんなら初めから情報を町民みんなに見せ、行政と町民が一緒になって福祉の町づくりをしようと百人委員会をつくりました」

全国に名を知られた百人委員会の正式名称は「西伯いきいきまちづくりの会」(会長市原文子さん)。町の人々は親切だが、いったん要介護老人を抱えると、役に立つサービスがほとんどなかっただけに痴呆症の母親を一六年間も介護してきた主婦、市原文子さんは公募のチラシを見るや「これだ!と油絵のお稽古も民生委員も放り出し即刻応募」、会長を引き受けたという。

こうしてはせ参じた町民は二〇歳代から八〇歳代までの男女九八人。「二、三〇人では住民の意見が反映しにくい。三〇〇人や五〇〇人だと多過ぎて意見がまとまらない。人口八三〇〇のこの町なら百人程度が格好の人数ですね」(山野さん)。

 

四、五級ヘルパー養成、福祉アパートを提言

 

百人委員会は九八年十二月五日にスタート。「介護保険の対象漏れ対策」などテーマごとに五班に分かれて勉強会を積み重ねた上、九九年八月三〇日、「西伯町における介護保険実施にむけての提言書」を坂本町長に提出した。

 

 

 

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