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専門ばかにならない、これが一番の基本です。たとえば数学の嫌いな子には国語とか体操の先生から教えてあげる。自分の不得意な科目でも必要最小限の知識はあるはずで、たとえその程度でも学校の先生になれるんだと。義務教育というのはその程度のものだと先生方に理解していただく。そして制度としては、心の教育というのはやはり体験が大きな鍵ですから、たとえば障害児や障害者の先生をもっと受け入れていただく。子供たちは自然に学びますよ。そして先生自身も子供たちと一緒にさらに人間性を伸ばしていただける、そんな取り組みになってほしいと願っています。

 

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杉浦 では、最後にお二人それぞれにメッセージをいただく前に、私の体験をちょっとだけお話しさせていただきます。私は小学生のころ、体が弱くて、勉強もあまりできなかったんです。でもとても気が強くてはっきり言って嫌われ者でした。その中で鮮明に覚えているのが小学校五、六年の担任の先生のことです。学芸会で挑太郎をやることになって、先生は「自分たちで配役を決めなさい。民主的にじゃんけんにしよう」とおっしゃった。ところが勝ち残ったのはどちらかというと勉強ができないタイプの子で、その瞬間、先生が「あっ」という顔をなさったんですよ。私、自分のことのようにとっても傷付きました。結局うまくできずにクラスのリーダー的な男の子に代わって無事学芸会は済みました。私、思うんですが、子供たちは今も昔も変わっていない、ただ、今の子は「おかしい、この先生は信頼できない」と思ったら、ちゃんと声を出して言うんです。そんなどちらかというとつらい小学校時代でしたが、校長先生のひと言が私を救ってくれました。廊下ですれ違ったりすると、いつも必ず、私、旧姓は清水と申しますが、「清水さん、元気ですか?」と声をかけてくださる。

 

 

 

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