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悪い先生がいたって、仲間同士できちんと考える力は持っている。そう勉強させてくれた点ではいい先生だったのかもしれない(笑)。

杉浦 はからずもお二人から叩かれる、殴られるというご経験談が出ましたが、でも受け止め方は全く逆ですよね。今問題になっている体罰についてはどうお考えですか。

中島 叱るというのは非常にむずかしいことです。感情を抑えて冷静に叱るのがいかにむずかしいか。その意味で体罰が目的化されると非常に危険だし、してはいけないと思います。

堀田 そうですね。絶対にしてはいけない。検事として暴行罪も取り扱ってきた経験でいえば、殴る行為は人の身体を傷つける以上にその人の心を傷つけます。非行に走る少年は、大概子供のころに親や先生にひどい殴られ方をしている。どんなに大変でも言葉で時間をかけて納得させなきゃいけない。殴るという方向は全く逆です。

杉浦 ありがとうございます。そこで基本となるのが今日のテーマ、心の教育ですね。

堀田 心の教育というのは、つまり人間性の教育なんです。教育基本法の第一条に書いてある教育の基本です。ところが今の子は小さい時から常に他と比較されて劣等感、自己否定を生んでいく。心の教育とは単に道徳教育で何を教えるかなどではなくて、もっと根元的なもの、自分を肯定できる教育です。個々の能力を見つけ出してそれを伸ばす。それでこそ生きる力が出てくるんです。

杉浦 まず長所を伸ばすということですね。ただ、現場の先生からしますと、やはり親も子も学力を伸ばしてほしいという期待がある中で、さらに人間性の教育もというのはむずかしいという方もいると思うのですが、いかがでしょうか。

堀田 確かに学習指導要領を全部守るとむずかしい(笑)。私は文部省の教育課程審議会の委員として「あの指導要領自体がいじめの原因である」と申し上げて、しょっちゅう睨まれてます(笑)。でも今度は三割方、義務教育の学習内容が減りますし、指導要領というのは一種の指導基準に過ぎない。子供たちが興味を持って学べ、そして人間的に成長できることが一番の基本と考えていただきたいですね、教育長さん、いかがでしょうか。

中島 これからは学校だけではなくて、家庭や地域も含めた社会全体でどう育てていくのかという視点が必要だと考えています。

 

 

 

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