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「去る者は日々に疎し」ということわざにそのことが示唆されているような気もします。

これだけお互いが接近して住んでいると、「プライバシーはどうなってるの?」と心配になるでしょう。そのとおりなのですが、反面、だからこそ困りごとができれば近隣にもすぐわかるというメリットもあるのです。あの阪神大震災以降、神戸では、一人暮らしの高齢者は、普段マンションのドアを開け放しにしていると聞きました。助け合いをするのにはむしろプライバシーは邪魔なのだとわかってくるらしいのです。

足尾の高齢者たちにそのあたりを率直に尋ねてみたら、プライバシーと助け合いの間の「よい按配」を工夫しているといった答えが返ってきました。単純には解決できない問題だが、しかし知恵を働かせる余地はあるといったところでしょうか。

助け合いの環境づくりはまだあります。足尾町の至る所に高齢者のたまり場(多くはその一人の自宅)があり、そこで日常的に顔を合わせ、近況を報告し合い、悩みを出し合うのは、実は助け合いへの大事な環境をつくっていたのです。当事者の間に日常的な交流がないと、突然困ったことが起きても「助けて!」と声を上げることはできないのです。あの「おすそわけ」も、助け合いへの助走と考えれば、納得がいきます。

また、こういうたまり場が近隣に一つあれば、そこが拠点になって、助け合いがはじまりやすいという利点もあります。助け合いのための拠点が必要らしいのです。といっても人工的に作ってもだめで、彼らが自然に集まってくるような場である必要があります。

 

近隣型助け合いとは…?

 

お互いの顔が見え、生活の内情がわかりあっている近隣の住民同士が、お互いの心を大切にしながら、日常生活の営みの中で、『自然流』に身の回りのお世話や家事、介護、食事づくりなど生活するために必要なことを互いに支え合い、助け合うことをいいます。

 

 

 

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