日本財団 図書館


一ヶ所に年間一〇〇〇万円まで補助金

 

武蔵野市の土屋正忠市長。一九九七年九月、介護保険法案の国会審議たけなわのころ「保険あって介護なし」「地方分権を否定する」と主張するパンフレットを武蔵野市全戸に配り、国の方針に真正面から反旗を翻して話題を呼んだ。法案が成立してからも「サービス不足のまま出発できるか」「コンピュータで人間の要介護度が計れるのか」というパンフを市内外に配布、一九九九年九月にもパンフを出し、介護認定申請者の個人情報オンライン化に対して「プライバシー保護上重大な問題」と厚生省に食いついた。

「戦う市長」が豹変したかに見えたのは九九年一〇月五日。武蔵野公会堂で開催されたテンミリオンハウス事業シンポジウムである。六〇〇人の市民を前に土屋市長は次のように演説した。

「介護保険には反対してきたが、法律として決まった以上、きちんと取り組む。ただ、介護保険だけではお年寄りの暮らしは支えられない。その部分をカバーするためにテンミリオンハウス事業を実施する。市内の丁目ごとにお年寄りのお世話をする拠点を三〇から四〇か所作りたい。それらは市民自身が自由にアイデアを凝らして市民自身で運営してほしい。われと思わん市民は名乗り出てもらいたい。サービスの内容も自由、事業主体も個人、団体などにも、こだわらない。採用事業には年間一〇〇〇万(テンミリオン)円まで補助金を出す」

それから一か月もたたない十一月一日、テンミリオンハウスの第一号「川路さんち」(ミニデイホーム)がモデル事業としてオープンした。一般公開日には二時間足らずの間に市内外から一五〇人以上の見学者が押し寄せた。武蔵野市の担当職員を質問攻めにした土浦市の市会議員もいた。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION