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それは確かにそうだろう、でもまず経済力、生産力を上げるほうが大事だと言っていました。ようやくここ数年ですね、はっきり気付くようになったのは。そういう国はたくさんあると思いますよ。

 

●日中友好二十一世紀委員会…日中双方の有識者が両国関係の安定・発展について協議する場。一九八四年に当時の中曽根首相と胡耀邦総書記の間で設置され、石川忠雄会長が日本側座長を務めてきた。昨年は六月に奈良で一三回目の会合が開催された。

 

堀田 日本も以前は途上国で、私も何もない時代を体験していますから、中国の人たち、あるいは発展途上国の人たちが物の豊かさを望む気持ちは理解できます。これは感覚的なものだから説得するのはなかなかむずかしいでしょうね。ですからあとはおっしゃるとおり実例で、むしろ不幸なことも多いよと示すしかないんですね。特捜部で汚職事件を数多く扱ってきた経験でも、むしろ物やお金を持ってる人たちほど不安で孤独ですよ。

石川 衣食足って礼節を知るといいますが、物だけが中心になってくると、人間とは必ずしも幸せを感じないのではありませんか。やはり心が問題なんですね。一生懸命工業化を進めて近代国家をつくって、その結果人間関係がすこぶるドライになって地域社会や人情などもどこかに消え失せた社会になってしまった。日本の場合はそれにいくつもの要素が重なって、本当に自分勝手な人間ができ過ぎて、社会的にも秩序がだんだん乱れてきているのが現状ですから、これを何とかしないと。

堀田 その人がその人らしく生きているか、みんなの中でいかに自分を伸ばし、役に立つことをしているか、それが一番大切なことだという価値観にぜひ変えていかないといけないですね。

 

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