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施設の中でも近年は特別養護老人ホームに相当するナーシングホームより、ホステルの充実に力が入れられている。ホステルといういは日本のケアハウスに相当し、一応自立した高齢者が、家事サービスを選び利用しながら生活する。一人用あるいは夫婦用のユニットにはミニキッチン、バスルームなどの設備が整い、自分の家具を持ち込み「わが家」らしく飾られている。利用料金は老齢年金額と家賃手当の合算額の八五%以内に抑えられている。

また配偶者を失ったり、家事援助を必要とする高齢者で、ある程度の経済力のある高齢者とはリタイアメントヴィレジに入る。これは民間経営で、一〇〇〇万円近い入所一時金を必要とするものもあるが、レクリエーション活動を組んだり、日本の高級有料老人ホームに相当するサービスが提供される。広い敷地の中でガーデニングを行い、花やハーブ作りなども楽しめる。

ホステルやナーシングホームを併設しているヴィレジも多く、身体機能の衰えとともにホステルからナーシングホームに移っていく。先日訪問したホステルでは配偶者に死別して一人でホステルに入居した八九歳の女性と九二歳の男性が恋におちて同居していた。残り短い人生だから一時も離れていたくないということである。

夫はホステルに住み、ナーシングホームに移った妻のもとに毎日通って何時間も手を握って付き添いをしている姿も見た。カップル社会のオーストラリアでは最後まで夫と妻、ボーイフレンド、ガールフレンドが生活の上でも心の上でも拠り所となるのだと感心させられる。

それでも結婚し離れて住んでいる子供たち、特に娘は頼りにされており、娘の家の近くのリタイアメントヴィレジやホステルに入居している高齢者は多い。

 

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ナーシングホームの妻の手を握る夫。

 

 

 

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